・数の数え上げ                    S.H氏

 最近、次の書籍

  野崎昭弘 著  離散数学 「数え上げ理論」  (講談社ブルーバックス)

を読んでいて、数え上げの面白さを堪能している。いくつかの例題から出発し、この例題は
このような考え方という具合に話が進められ、順列・組合せの理論を一通り学習された方
にとっては頭の整理に役立つ。ただ、初学者にとっては理解するのに少し時間がかかるか
もしれない。

 その中で、次のオイラーの定理が目を引いた。

オイラーの定理

 n 個の同じものを、いくつかの同じ袋に分けるとき、

   (A) すべてを奇数個ずつに分ける方法の数

   (B) どの2つも異なる数に分ける方法の数

について、 (A)=(B) が常に成り立つ。


 一見して信じられない結果であるが、正しい結果である。オイラーは無限級数を利用して
証明したらしい。

 いくつか具体的な場合について考察してみよう。

例 n=2 のとき、

   (A) 1+1 の 1通り       (B) 2 の 1通り

 で、この場合、 (A)=(B) が成り立つ。

例 n=3 のとき、

   (A) 3 と 1+1+1 の 2通り       (B) 3 と 2+1 の 2通り

 で、この場合、 (A)=(B) が成り立つ。

例 n=4 のとき、

   (A) 3+1 と 1+1+1+1 の 2通り       (B) 4 と 3+1 の 2通り

 で、この場合、 (A)=(B) が成り立つ。

例 n=5 のとき、

   (A) 5 と 3+1+1 と 1+1+1+1+1 の 3通り

   (B) 5 と 4+1 と 3+2 の 3通り

 で、この場合、 (A)=(B) が成り立つ。

例 n=6 のとき、

   (A) 5+1 と 3+3 と 3+1+1+1 と 1+1+1+1+1+1 の 4通り

   (B) 6 と 5+1 と 4+2 と 3+2+1 の 4通り

 で、この場合、 (A)=(B) が成り立つ。

 上記で、n=2、3、4、5、6 の場合を調べたが、(A)(B)それぞれの場合は全く同じ訳
ではない。しかし、その場合の数は必ず一致するという。正に数学の神秘さを感じる瞬間で
ある。

 (A)=(B) が成り立つということは、(A)と(B)に一対一の対応がつくということである。

 n=6 の場合について見てみよう。

   (A)={ 5+1 ,3+3 ,3+1+1+1 ,1+1+1+1+1+1 }

   (B)={ 6 ,5+1 ,4+2 ,3+2+1 }

 (A)の要素 5+1 は「どの2つも異なる数に分ける方法」にもなっているので、(B)に含ま

れる。よって、この場合は、5+1 に 5+1 が対応するものと考えるのが自然だろう。

 また、奇数個ずつに分けると、同じ個数のものが現れる。

 そこで、次の操作(T)を考える。

  操作(T): (A)の要素の計算式の中に、2つの同じ数のものがあったら、それら
        を加えて、新しい計算式を作る。


 操作(T)の結果、(A)に含まれる要素はすべて(B)に含まれることになる。

   (A)={ 5+1 ,6 ,3+2+1 ,2+1+1+1+1 }

      ={ 5+1 ,6 ,3+2+1 ,2+2+1+1 }

      ={ 5+1 ,6 ,3+2+1 ,2+2+2 }

      ={ 5+1 ,6 ,3+2+1 ,4+2 } ⊂(B)

 逆に、次の操作(T’)を考える。

  操作(T’): (B)の要素の計算式の中に、偶数があったら、それらを2つの数に
         等分割し、新しい計算式を作る。


 この操作(T’)は、ちょうど操作(T)の逆の操作になっている。操作(T’)の結果、(B)に含
まれる要素はすべて(A)に含まれることになる。

   (B)={ 6 ,5+1 ,4+2 ,3+2+1 }

      ={ 3+3 ,5+1 ,2+2+1+1 ,3+1+1+1 }

      ={ 3+3 ,5+1 ,1+1+1+1+1+1 ,3+1+1+1 } ⊂(A)

 以上から、 (A)=(B) が成り立つ。

(コメント) 操作(T)、(T’)を考えるところが新鮮でした!

 また、冒頭の書籍には、このオイラーの定理の拡張にも触れられている。

オイラーの定理の拡張

 n 個の同じものを、いくつかの同じ袋に分けるとき、

   (A) すべてを k で割り切れない数ずつに分ける方法の数

   (B) 同じ数が高々 k−1 個であるように分ける方法の数

について、 (A)=(B) が常に成り立つ。 ただし、k は2以上の自然数。


 k=2 の場合がオイラーの定理である。

例 n=6、k=3 の場合

   (A) 5+1 、4+2 、4+1+1 、2+2+2 、2+2+1+1 、

      2+1+1+1+1 、1+1+1+1+1+1 の 7通り

   (B) 6 、5+1 、4+2 、4+1+1 、3+3 、3+2+1 、

      2+2+1+1 の 7通り

 で、この場合、 (A)=(B) が成り立つ。


 このオイラーの定理の拡張を示す方法は、オイラーの定理の場合と同様にできる。

 2つの互いに逆な操作(T)、(T’)を考えればよい。

  操作(T): (A)の要素の計算式の中に、k 個の同じ数があったら、それらを加え
        て、新しい計算式を作る。


  操作(T’): (B)の要素の計算式の中に、k の倍数があったら、それらを k 個の
         数に等分割し、新しい計算式を作る。


 操作(T)により、

   (A)={5+1,4+2,4+1+1,2+2+2,2+2+1+1,
                             2+1+1+1+1,1+1+1+1+1+1}

      ={5+1,4+2,4+1+1,6,2+2+1+1,2+3+1,3+3}

      ={6,5+1,4+2,4+1+1,3+3,3+2+1,2+2+1+1} ⊂(B)

 操作(T’)により、

   (B)={2+2+2,5+1,4+2,4+1+1,1+1+1+1+1+1,
                                 1+1+1+2+1,2+2+1+1}

      ={5+1,4+2,4+1+1,2+2+2,2+2+1+1,
                    2+1+1+1+1,1+1+1+1+1+1} ⊂(A)

 以上から、 (A)=(B) が成り立つ。



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