・ 因数分解 S.H氏
最近の高校教育では、あまり複雑な因数分解は取り扱わないようになってきた。数学嫌い
を増やさないために、それはそれで好ましいことであるが、計算力を鍛えるという意味におい
ては、とても残念なことである。
次の問題は、平成21年2月22日付けで、S(H)さんが出題されたものである。
F( x , y , z )=x4+y4+z4+2x2y2+2y2z2+2z2x2−2y3−2z3
−2x2y−2y2z−2yz2−2zx2−x2+y2+z2+Ayz=0
が2つの球面を表すように、左辺を因数分解せよ。
S(H)さんからは、「未定係数法以外の発想でAを定めてネ!」と条件付きなのだが、未
定係数法は、複雑な因数分解に対する1つの対処法なので、未定係数法で求めてみるこ
とにした。
F( x , y , z )=(x2+y2+z2+ax+by+cz+d)(x2+y2+z2+kx+ly+mz+n) と因
数分解されたものとして、
F( x , y , z )=x4+y4+z4+2x2y2+2y2z2+2z2x2
+(k+a)x3+(l+b)y3+(m+c)z3+(l+b)x2y+(k+a)xy2
+(m+c)y2z+(l+b)yz2+(k+a)z2x+(m+c)zx2+(n+d+ak)x2
+(n+d+bl)y2+(n+d+cm)z2+(al+bk)xy+(bm+cl)yz
+(am+ck)zx+(an+dk)x+(bn+dl)y+(cn+dm)z+dn=0
係数比較して、
k+a=0 、l+b+2=0 、m+c+2=0 、n+d+ak=−1 、n+d+bl=1 、
n+d+cm=1 、al+bk=0 、bm+cl=A 、am+ck=0 、an+dk=0 、
bn+dl=0 、cn+dm=0 、dn=0
ここで、n≠0 とすると、 a=b=c=d=0
このとき、 n+d=1 かつ n+d=−1 (矛盾) なので、 n=0
d≠0 とすると、 k=l=m=0 このとき、 d=1 かつ d=−1 (矛盾)
よって、 d=0 で、このとき、
k=−a 、l=−b−2 、m=−c−2 、ak=−1 、bl=1 、cm=1 、al+bk=0 、
bm+cl=A 、am+ck=0 において、
k=−a、ak=−1 より、 a2=1 よって、 a=1、−1
l=−b−2、bl=1 より、 b2+2b+1=0 よって、 b=−1
m=−c−2、cm=1 より、 c2+2c+1=0 よって、 c=−1
以上から、
(a,b,c,d,k,l,m,n)=(1,−1,−1,0,−1,−1,−1,0) のとき、 A=2
(a,b,c,d,k,l,m,n)=(−1,−1,−1,0,1,−1,−1,0) のとき、 A=2
何れにしても、 F(
x , y , z )=
(x2+y2+z2+x−y−z)(x2+y2+z2−x−y−z) と因
数分解される。
(コメント) S(H)さんの問題では、さらに、
2つの球面の交角(2つの球面の交線上の任意の点に於ける接空間T1、T2 の為す
角)を求めよ。
と続く。これについては、今後の楽しみにとっておこう。
上記の因数分解の問題を、FNさんが未定係数法以外の方法で考えられた。
(平成22年12月9日付け)
F( x , y , z )=x4+y4+z4+2x2y2+2y2z2+2z2x2−2y3−2z3
−2x2y−2y2z−2yz2−2zx2−x2+y2+z2+Ayz=0
が2つの球面を表すように因数分解されるので、
F( x , y , z )=(x2+y2+z2+ax+by+cz)(x2+y2+z2+kx+ly+mz)
と書ける。
このとき、F( x , y , z )=0 と、xy平面(すなわち、z=0)との交線の方程式は
F( x , y , 0 )=(x2+y2+ax+by)(x2+y2+kx+ly)
と因数分解される。ところで、
F( x , y , 0 )=x4+y4+2x2y2−2y3−2x2y−x2+y2
=(x2+y2)2−2y(x2+y2)−(x+y)(x−y)
=(x2+y2−x−y)(x2+y2+x−y)
同様に、F( x , y , z )=0 と、zx平面(すなわち、y=0)との交線の方程式は
F( x , 0 , z )=(x2+z2+ax+cz)(x2+z2+kx+mz)
と因数分解される。ところで、
F( x , 0 , z )=x4+z4+2z2x2−2z3−2zx2−x2+z2
=(x2+z2)2−2z(x2+z2)−(x+z)(x−z)
=(x2+z2−x−z)(x2+z2+x−z)
以上から、
F( x , y , z )=(x2+y2+z2−x−y−z)(x2+y2+z2+x−y−z)
と因数分解されることが分かる。このとき、Aは yz の係数なので、A=1+1=2 である。
(コメント) 3変数で因数分解が難しそうに見えたのに、2変数にした途端、容易になった因
数分解、感動しました!FNさんに感謝します。