・ 正方形の面積(2)                S.H氏

 以前、あるクイズ番組で、正方形の面積を問う問題が出題された。この問題を一般化し
て、下記のように解いてみた。

 1辺の長さが a+1 の正方形ABCDにおいて、各辺上に、

  AP=1 、BQ=1 、 CR=1 、 DS=1

となるように点 P、Q、R、S をとる。

 このとき、線分 AR、BS、CP、DQ で囲まれる正方形KLMNの面積を求めよ。

         

(解) ∠BAR=θ とおくと、 tanθ=(a+1)/a なので、

       

よって、正方形KLMNの一辺の長さは、

        

なので、正方形の面積 S は、

        

で与えられる。

 ここで、
       a=1 (P、Q、R、Sが各辺の中点)のとき、 S=4/5

       a=2 のとき、 S=9/13

       a=3 のとき、 S=16/25

       a=4 のとき、 S=25/41

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 クイズ番組は、「a=2」の場合でした!

 クイズになるくらいだから、もしかしたら「グッ」とくる名答があるかも...。

 もっと初等的に求める方法を思いつかれた方、こちらまで是非ご教示下さい。

(追記) 平成20年11月29日付け

 4人の方から、次のような別解を頂いた。別解をお寄せいただいた方に感謝します。

(らすかるさんの別解)
   線分ARに垂線PHを引く。このとき、

      △PAH∽△BSA なので、

   PH2=(PH/PA)2=AB2/BS2

   よって、正方形の面積は、

      





(コメント) PH=PH/PA という発想が斬新ですね!

(eibu さんの別解)
   左図において、KN=x、AK=ND=y とおくと、

  KS‖ND なので、AK : KN=AS : SD=a : 1

   すなわち、 y : x=a : 1 より y=ax

   一方、△ANDは直角三角形なので、

    (x+y)2+y2=(a+1)2

  y=ax を代入して、
              


(コメント) やはり、この問題で、「sin」を持ち出すのは、邪道ですかね?お二方の解答は
      十分中学生にも分かる解答だと思います。

(高校3年 蕪昧さんの別解)
ARの延長線とBCの延長線の交点をTとする。

  DR:CR=a:1 より、AD:CT=a:1

  AD=a+1 なので、CT=(a+1)/a

よって、 

  QT=(a2+a+1)/a 、BT=(a+1)2/a

ここで、三平方の定理より、

  AT2=(a+1)2(2a2+2a+1)/a2

 また、DA:QT=a+1:(a2+a+1)/a=a2+a:a2+a+1 より、

  AN:TN=a2+a:a2+a+1

 AN+TN=AT なので、

  AN2=(a2+a)2/(2a2+2a+1)2×(a+1)2(2a2+2a+1)/a2

     =(a+1)4/(2a2+2a+1)

 同様にして、 SA:BT=a:(a+1)2/a=a2:(a+1)2 より、 AK:TK=a2:(a+1)2

 AK+TK=AT なので、

  AK2=a4/(2a2+2a+1)2×(a+1)2(2a2+2a+1)/a2

     =(a2+a)2/(2a2+2a+1)

 KN=AN−AK より、正方形の一辺の長さが求められ、よって、

    

(コメント) 計算は十分中学生的ですが、少し計算がかかりすぎのような...予感。

(Oxiaさんの別解)
   三角形の相似より、AK:KN=BL:LK=a:1
  なので、正方形KLMNの一辺の長さを x とおくと、

    BK=(a+1)x 、 AK=BL=ax

  また、正方形ABCDの一辺の長さは、a+1 より、
  △BAKで三平方の定理より、

    (a+1)22+a22=(a+1)2

   これより、
         


(コメント) eibuさんの別解と趣旨は同じでした。

 まだ、「グッ」とくる名答に出会えていない...。確かクイズ番組では、もっと簡単に示して
いたような...思い出せない、残念!

(追記) 平成20年11月30日付け

 さらに、多くの方から、次のような別解を頂いた。別解をお寄せいただいた方に感謝します。

(zk43さんの別解)
   2つの平行四辺形APCR、BQDSを取り去って、

  1辺の長さ a の正方形にすると、やはり中に小さい

  正方形ができる。この小さい正方形の面積は、

    (a2/(a+1)2)×S

  よって、

 (a+1)2−{2(a+1)−S}=a2−{a2/(a+1)2}S

  より、
      

(コメント) 三平方の定理を使うのは避けたい、平方根も使いたくない、・・・と贅沢なことを
      考えていましたが、zk43さんの別解で眼前の暗雲が雲散霧消しました。初等的
      すぎるくらい初等的で感動しました。ただ惜しむらくは、面積比が相似比の2乗に
      比例することを用いているので、高校1年レベルでしょうか?もっとも、この程度の
      知識は、小学校レベルでも理解できないことはないと思いますが...。

(あとねこさんの別解)
  蕪昧さんの別解の図から、

  DN:NM::MQ=a(a+1):a+1:a2

 となり、簡単に正方形の1辺が求まる。



(コメント) 比の計算が難しい...予感。







(高校3年 Fさんの別解)

△DMC∽と△DCQ で、相似比は、DC : DQ=a+1 :

また、 2△DQC=□ABCD−平行四辺形BQDS=a(a+1)

求める面積 S は、□ABCDから4△DCM を引いたものに等しいので、

 S=(a+1)2−2a(a+1)×(a+1)2/(2a2+2a+1) より、

    

 ところで、質問です。

 □KLMNの面積 → 0.5 (a → ∞) と出てきますが、これは一体何を示しているので
しょうか?

(コメント) Sの分母と分子は、「同位の無限大」という事実しかないように思います。
      収束値が0でないことが重要で、「0.5」という数字に特段大きな意味はないもの
      と思われます。

(GAI さんの別解)

   a=2 のとき、正方形KLMNの各辺に平行な補助線(幅は正方形の一辺の長さ)を

 書き入れると、もとの正方形ABCDの中に正方形KLMNと同形とならない半端な図形が

 16個できるが、この半端図形同士を組み合わせて、正方形KLMNと同形にできる。

         

  こうして結局、大きな正方形ABCDの中には小さな正方形KLMNの形がぴったり13個

 入る。従って、求める面積は、a=2 のときは、 3×3÷13=9/13

 こう考えると、

  a=3 では小さな正方形が、 1+3+5+7+5+3+1=25(個) 入る。

  a=4 では小さな正方形が、 1+3+5+7+9+7+5+3+1=41(個) 入る。

一般に、

  1+3+5+・・・+(2a−1)+(2a+1)+(2a−1)+・・・+5+3+1

 =2×a2+(2a+1)=2a2+2a+1(個)

の小さな正方形が、元の正方形ABCDにぴったり含まれるので、一個あたりの面積は、

    

となる。

(コメント) 面白いユニークな解法ですね!正しく、これはクイズの答えらしい爽やかさに
      溢れています...。 私が待ち望んだ解答です。GAI さんに感謝!

(蕪昧さんの新しい別解)
   台形NMCRを、「N→K」、「M→L」となるように平
  行移動させる。

   点Cおよび点Rの移動先の点を、C’、R’とし、C’
  からBCに下ろした垂線の足をHとする。

   この時、CC’=MLである。

   また、正方形KLMNと平行四辺形R’C’CRの面
  積は等しく、CR=1 より、CH=S となる。

    △PBC∽△C’HC より、

      PC2 : BC2=C’C2 : HC2


   三平方の定理より、 PC2=2a2+2a+1 なので、

      2a2+2a+1 : (a+1)2=S : S2=1 : S

  となり、これを解いて、
                

(コメント) 新しい別解を考えられた蕪昧さんに感謝。計算がスッキリしましたね!

      平行移動した後の、線分CC’の長さが求める正方形の一辺の長さに等しいこと、
     線分CHの値が丁度求める面積の値と等しいことを利用した解法で、数学に対する
     蕪昧さんの非凡さを感じさせます。

(追記) 平成20年12月4日付け

(zk43さんの新しい別解)
   平行四辺形APCRの面積について、

     AP×AD=AR×KL

   すなわち、

     1×(a+1)=×KL

   これより、 S=KL2は、

         



(コメント) 平行四辺形の面積を2通りに計算する手法に感動しました。



 この話題と同様な問題が灘中学入試(2007)で出題された。



   左図の四角形ABCDは、1辺5cmの正方形で、

  AE、BF、CG、DHの長さはすべて2cmである。

   斜線部分の面積を求めよ。








(解)
△BEK∽△BAN より、

△BEK : △BAN
 =32 : 52=9 : 25 なので、

△BEK : □EKNA=9 : 16

  ここで、

  △ABH=3・5/2=15/2

なので、

(9+16+9)k=15/2 より、

    k=15/68

よって、求める面積は、

25−(9+16)k・4

=50/17  (終)



 この問題については、いろいろな別解が考えられる。

(別解) KN=2m とおくと、 BK=NW=3m なので、

    正方形ABCD : 正方形KLMN

  = (8m)2−4・3m(3m+2m)/2 : (2m)2 = 34 : 4

  したがって、 求める面積は、 25×4/34=50/17  (終)

(コメント) 何となく別解の方が小学生向きですね!


(別解) KN=2m とおくと、 BK=3m なので、

         AB2=(3m+2m)2+(3m)2=34m2=25

    このとき、 m2=25/34 なので、求める面積は、 (2m)2=50/17  (終)

(コメント) この別解では、三平方の定理が用いられているので、中学生向きかな!

 数学セミナー(2009年1月号 日本評論社)の「エレガントな解答をもとむ」でも、同様な
問題が取り上げられた。

 正方形の折り紙を折って面積が元の大きさの1/5となる正方形の一辺を作図せよ。

(解) 22+12=5 なので、
                

 したがって、折り紙を3回折れば、面積 1 の正方形の1辺の長さを見いだすことができる。


(追記) 平成21年10月25日放送の「熱血!平成教育学院」(フジテレビ系)で同様の図
    形を題材とする問題が出題された。次はその問題を改題したものである。



   左図のように、面積45の正方形ABCDの各辺の

  中点をK、L、M、Nとし、これらと頂点を結んで、正

  方形PQRSを作る。このときできる正方形の一辺

  の長さPQを求めよ。






 数学セミナーの問題のように考えれば、正方形PQRSの面積は、 45÷5=9 となるの

で、明らかに、 PQ=3 となる。

 正方形PQRSがもとの正方形ABCDの1/5という感覚は、次の図と睨めっこをすると、自
然に了解されるだろう。
      


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