・タイプ別の定積分                       GAI 氏

 次の定積分の値を、明示的解で示して下さい。

(1)∫[x=0->1](1-x^2)^5dx

(2)∫[x=0->1](x*(1-x))^5dx

(3)∫[x=0->1](x*(1-x))^5/(1+x^2)dx


 GAI さんからのコメントです。(令和6年11月8日付け)

(1) 256/693 (2)1/2772 (3)11411/2520-2*log(2)-π だと思います。

 (1)、(2)は、一般に、∫[x=0,1](x*(1-x))^ndx=∫[x=0,1](1-x^2)^ndx/4^n=Beta(n+1,n+1)

但し、Beta(s,t)=Γ(s)*Γ(t)/Γ(s+t) (ベータ関数)

で繋がっていて、

gp > bestappr(intnum(x=0,1,(1-x^2)^5))
%470 = 256/693
gp > bestappr(intnum(x=0,1,(1-x^2)^5)/4^5)
%471 = 1/2772
gp > bestappr(intnum(x=0,1,(x*(1-x))^5))
%472 = 1/2772
gp > Beta(s,t)=gamma(s)*gamma(t)/gamma(s+t);
gp > bestappr(Beta(6,6))
%475 = 1/2772

 (3)は、∫[x=0,1]x^n/(1+x^2)dx=∫[t=0,Pi/4]tan(t)^ndt の置換積分で、そこで、

gp > (x*(1-x))^5
%476 = -x^10 + 5*x^9 - 10*x^8 + 10*x^7 - 5*x^6 + x^5
=(5*x^9+10*x^7+x^5)-(x^10+10*x^8+5*x^6)

ここで、I=∫[x=0,1](x*(1-x))^5/(1+x^2)dx において、x=tan(t) と置くと、

 dx=dt/cos(t)^2=dt*(1+tan(t)^2)=dt*(1+x^2) x=0-->t=0 ; x=1-->t=Pi/4

よって、

I=∫[t=0,Pi/4](5*tan(t)^9+10*tan(t)^7+tan(t)^5)dt-∫[t=0,Pi/4](tan(x)^10+10*tan(t)^8+5*tan(t)^6)dt
=5*(1/2*log(2)-7/24)+10*(-1/2*log(2)+5/12)+(1/2*log(2)-1/4)
 -(-1/4*Pi+263/315)-10*(1/4*Pi-76/105)-5*(-1/4*Pi+13/15)
=11411/2520-2*log(2)-Pi
(この計算はほとほとめんどくさい。)

gp > intnum(x=0,1,(x*(1-x))^5/(1+x^2))
%480 = 0.00028758846491931730606697697874715425500493507898685
gp > 11411/2520-2*log(2)-Pi
%481 = 0.00028758846491931730606697697874715425500493507898685


 kuiperbelt さんからのコメントです。(令和6年11月8日付け)

 私もベータ関数で考えました。

(1)については、

∫[x=0→1](1-x^2)^5dx=(1/2)∫[x=-1→1]((1+x)*(1-x))^5dx
=∫[t=0→1](2t*2(1-t))^5dt=2^10*Β(6,6)=2^10*Γ(6)^2/Γ(12)
=2^10*(5!)^2/(11!)=1024/2772=256/693

となりますが、(2)については、

∫[x=0→1](x*(1-x))^5dx=∫[x=0→1](x^5*(1-x)^5)dx
=Β(6,6)=Γ(6)^2/Γ(12)=(5!)^2/(11!)=(5*4*3*2*1)/(11*10*9*8*7*6)
=1/(11*2*3*2*7*3)=1/2772

となるのではないでしょうか。

(3)については、∫[x=0→1](x*(1-x))^n/(1+x^2)dx (n=1,2,3,4,5) を順次求めてみました。

(x(1-x))/(1+x^2)=(x-x^2)/(1+x^2)=(x+1)/(1+x^2)-1 より

∫[x=0→1](x*(1-x))/(1+x^2)dx=∫[x=0→1]((x+1)/(1+x^2)-1)dx=ln(2)/2+π/4-1

(x(1-x))^2/(1+x^2)=((x+1)/(1+x^2)-1)*(x(1-x))
((x+1)x(1-x))/(1+x^2)=(x-x^3)/(1+x^2)=2x/(1+x^2)-x

より、

∫[x=0→1](x*(1-x))^2/(1+x^2)dx=∫[x=0→1](2x/(1+x^2)-x-x(1-x))dx
=ln(2)-Β(2,1)-Β(2,2)=ln(2)-Γ(2)Γ(1)/Γ(3)-Γ(2)^2/Γ(4)
=ln(2)-(1!*0!)/2!-(1!)^2/(3!)=ln(2)-1/2-1/6=ln(2)-2/3

(x(1-x))^3/(1+x^2)=(2x/(1+x^2)-x-x(1-x))*(x(1-x))
(x^2(1-x))/(1+x^2)=(x^2-x^3)/(1+x^2)=(x-1)/(1+x^2)-(x-1)

より、

∫[x=0→1](x*(1-x))^3/(1+x^2)dx
=∫[x=0→1](2(x-1)/(1+x^2)+2(1-x)-x^2(1-x)-x^2(1-x)^2)dx
=ln(2)-π/2+2Β(1,2)-Β(3,2)-Β(3,3)
=ln(2)-π/2+2Γ(1)Γ(2)/Γ(3)-Γ(3)Γ(2)/Γ(5)-Γ(3)^2/Γ(6)
=ln(2)-π/2+2*(0!1!)/2!-(2!1!)/4!-(2!)^2/5!
=ln(2)-π/2+1-1/12-1/30=ln(2)-π/2+53/60

(x(1-x))^4/(1+x^2)=(2(x-1)/(1+x^2)+2(1-x)-x^2(1-x)-x^2(1-x)^2)*(x(1-x))
-(x-1)^2*x/(1+x^2)=-x*(1-2x+x^2)/(1+x^2)=2x^2/(1+x^2)-x=-2/(1+x^2)+2-x

より、

∫[x=0→1](x*(1-x))^4/(1+x^2)dx
=∫[x=0→1](-4/(1+x^2)+4-2x+2x(1-x)^2-x^3(1-x)^2-x^3(1-x)^3)dx
=-π+4Β(1,1)-2Β(2,1)+2Β(2,3)-Β(4,3)-Β(4,4)
=-π+4Γ(1)^2/Γ(2)-2Γ(2)Γ(1)/Γ(3)+2Γ(2)Γ(3)/Γ(5)-Γ(4)Γ(3)/Γ(7)-Γ(4)^2/Γ(8)
=-π+4(0!)^2/1!-2(1!0!)/2!+2(1!2!)/4!+(3!2!)/6!-(3!)^2/7!
=-π+4-1+1/6-1/60-1/140=-π+22/7

(x(1-x))^5/(1+x^2)=(-4/(1+x^2)+4-2x+2x(1-x)^2-x^3(1-x)^2-x^3(1-x)^3)*(x(1-x))
(x(1-x))/(1+x^2)=(x-x^2)/(1+x^2)=(x+1)/(1+x^2)-1

より、

=∫[x=0→1](-4(x+1)/(1+x^2)+4+4x(1-x)-2x^2(1-x)+2x^2(1-x)^3-x^4(1-x)^3-x^4(1-x)^4)dx
=-2*ln(2)/2-π+4Β(1,1)+4Β(2,2)-2Β(3,2)+2Β(3,4)-Β(5,4)-Β(5,5)
=-2*ln(2)/2-π+4Γ(1)^2/Γ(2)+4Γ(2)^2/Γ(4)-2Γ(3)Γ(2)/Γ(5)+2Γ(3)Γ(4)/Γ(7)
 -Γ(5)Γ(4)/Γ(9)-Γ(5)^2/Γ(10)
=-2*ln(2)/2-π+4(0!)^2/1!+4(1!)^2/3!-2(2!1!)/4!+2(2!3!)/6!-(4!3!)/8!-(4!)^2/9!
=-2*ln(2)/2-π+4+2/3-1/6+1/30-1/280-1/630=-2*ln(2)-π+11411/2520


 GAI さんからのコメントです。(令和6年11月9日付け)

 (3)もベータ関数に繋がるんですね。参考に、n=6,7,8,9,10 でやってみました。

I6=38429/13860-4*ln(2)
I7=2*π-4*ln(2)-421691/120120
I8=4*π-188684/15015
I9=8*ln(2)+4*π-17069771/942480
I10=16*ln(2)-1290876029/116396280


 DD++ さんからのコメントです。(令和6年11月9日付け)

 (1)と(2)はベータ関数なんて持ち出さなくても、5回部分積分すれば高校生でもすぐ答えられ
る問題ですね。

(1)
∫[x=0->1] (1-x^2)^5 dx
= (1/2) ∫[x=-1->1] (1+x)^5*(1-x)^5 dx
= (1/2)*(5/6) ∫[x=-1->1] (1+x)^6*(1-x)^4 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7) ∫[x=-1->1] (1+x)^7*(1-x)^3 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8) ∫[x=-1->1] (1+x)^8*(1-x)^2 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9) ∫[x=-1->1] (1+x)^9*(1-x) dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9)*(1/10) ∫[x=-1->1] (1+x)^10 dx
= (1/2)*(5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9)*(1/10)*(1/11)*2^11
= 256/693

(2) (1) と同様にして、

∫[x=0->1] (x*(1-x))^5 dx
= (5/6)*(4/7)*(3/8)*(2/9)*(1/10)*(1/11)*1^11
= 1/2772

(3) まず、(x*(1-x))^5 = (1+x^2)Q(x) + ax + b とおき、x = ±i を代入すると、

-4 - 4i = b + ai 、-4 + 4i = b - ai となるので、a = b = -4

また、∫[x=0->1] 1/(1+x^2) dx = π/4 (x=tanθの置換積分による) と

∫[x=0->1] 2x/(1+x^2) dx = log2

が成り立ちます。

よって、

∫[x=0->1] (x*(1-x))^5/(1+x^2) dx
= ∫[x=0->1] {x^5*(1-x)^5+4x+4}/(1+x^2) dx - 4 ∫[x=0->1] 1/(1+x^2) dx - 2 ∫[x=0->1] 2x/(1+x^2) dx
= Σ[n=0->∞] ∫[x=0->1] {x^(2n+5)*(1-x)^5+4*x^(2n+1)+4*x^(2n)}*(-1)^n dx - π - 2log2
= Σ[n=0->∞] {120/((2n+11)(2n+10)(2n+9)(2n+8)(2n+7)(2n+6))+4/(2n+2)+4/(2n+1)}*(-1)^n - π - 2log2
= Σ[n=0->∞] {-1/(2n+11)+5/(2n+10)-10/(2n+9)+10/(2n+8)-5/(2n+7)+1/(2n+6)+4/(2n+2)
 +4/(2n+1)}*(-1)^n - π - 2log2
= 4/1 + 4/2 - 4/3 - 4/4 + 4/5 + 5/6 - 9/7 + 5/8 - 1/9 - π - 2log2
= 11411/2520 - π - 2log2

#最後の1行は、手計算じゃ厳しい……。


 GAI さんからのコメントです。(令和6年11月12日付け)

 11411/2520の正体が、4/1 + 4/2 - 4/3 - 4/4 + 4/5 + 5/6 - 9/7 + 5/8 - 1/9 であること
は驚きました。

 (x*(1-x))^6,(x*(1-x))^7 に現れる分数値 38429/13860、- 421691/120120 について、
DD++さんの巧みな方法を参考に探すと、

2 + 4/3 - 7/4 - 3/5 + 1/7 + 14/9 + 1/11 = 38429/13860
- 6 + 7/3 + 6/5 + 8/7 - 7/8 - 20/11 + 17/12 - 1/13 = - 421691/120120

によって構成されてくることになるんですね。しかし、そもそも、

∫[x=0,1]1/(x^2+1)dx=納n=0,oo]((-1)^n*∫[x=0,1]x^(2*n)dx)
∫[x=0,1]x/(x^2+1)dx=納n=0,oo](-1)^n*∫[x=0,1](x^(2*n+1)dx)
∫[x=0,1]x^2/(x^2+1)dx=納n=0,oo]((-1)^n*∫[x=0,1]x^(2*n+2)dx)
∫[x=0,1]x^s/(1-x)^sdx=納n=0,oo]((-1)^n*∫[x=0,1]x^(2*n+s)*(1-x)^sdx)

なんて式が思いつけるんですか?


 DD++ さんからのコメントです。(令和6年11月12日付け)

 単純に、1/(1+x^2) がいやだなあ……
→x か 1-x だけを因数に持つものの総和で書けたらなあ……
→初項 1 で公比 -x^2 の無限等比級数に展開すれば、それできるじゃん!

というだけです。ところで、あとから気がついたんですが、普通に x^5*(1-x)^5 を 1+x^2 で
割った商を普通に積分すれば同じ内容の分数の和に帰着するっぽいですね。

 式変形頑張ったの、あんまり意味なかった疑惑。



  以下、工事中!



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