・マグニチュード                     S.H氏

 数学は役に立たない、せっかく学んでも使う機会がない、...というのが世間一般の数
学に対するイメージだろう。確かに高校程度で学ぶ数学は計算が主で、理論的な深みま
で学習することはないから、「微積を学んでも、日常生活で使わないから意味ないし...」
というのはある意味で正しいだろう。

 数学が我々の生活に深く根付いて使われているということを説明しようにも、使われてい
る数学が高度すぎて説明できないのも口惜しい。いま流行りの「音楽dataの圧縮技術」と
して、フーリエ変換などが活躍しているよ、と言ってみても聞き流されてしまう。

 「対数」という分野も「アンチ数学」の面々には評判が悪い。植物の生長を対数で理解す
ると、その規則的な変化に驚かされるとか、数の大きさのおおよそを知る道具だとか説明
しても、ただ虚しいだけである。

 高校数学では「対数」の扱いが以前に比べだいぶ軽減されてきているが、自然科学にお
ける「対数」的考え方は依然として不動のものと言える。

 情報エントロピーやら、マグニチュードやら、すべて対数を用いて定義されている。

 地震が発するエネルギーの大きさを公正に判断するために、マグニチュードという概念が
1935年米国の地震学者チャールズ・F・リヒターによって導入された。

 震源地から100km離れた地点での地震計の揺れの最大振幅(中心値からの最大振幅
で、単位はミクロン(mμ))の対数を、マグニチュードという。

 地震が発するエネルギーの大きさを、E(単位はジュール(J))とし、マグニチュードをMと
おくと、
      log10E=4.8+1.5M

が成り立つという。

 したがって、 マグニチュードが1増えると、地震が発するエネルギーの大きさは、

        (倍)

すなわち、およそ32倍になる。

例 広島に投下された原子爆弾のエネルギーは、TNT火薬2万トン(8×1013(J))に相当
  すると言われる。このときのマグニチュードを計算してみよう。

    log108×1013=4.8+1.5M  より、 0.903+13=4.8+1.5M

  よって、 1.5M=9.103 から、 M≒6.07

  以上から、広島の原爆のエネルギーは、マグニチュード6くらいに相当する。

(コメント) 広島の原爆のエネルギーと地震のエネルギーを単純に置き換えることはでき
      ないと私的に思う。マグニチュードの定義式に常用対数(底が10 の対数)が用
      いられていることに驚かされた。


(追記) 平成28年4月17日付け

 4月14日(木)午後9時26分に熊本地方を震源とするマグニチュード6.5(震度7)の大
地震が発生した。これは前震で、本震は4月16日(土)午前1時25分に発生した熊本地方
を震源とするマグニチュード7.3(震度6強)と言われる。

 阪神大震災(1995年)がマグニチュード6.9だったので、単純に計算すれば、

   log10E/E’=1.5×0.4=0.6 より、 E/E’=3.98107・・・

より、阪神大震災の地震のエネルギーの約4倍のエネルギーが熊本地方に働いたことにな
る。

 熊本には何人か知り合いもいるので非常に心配であるが、政府が本腰を入れて救援活動
をしてくれるので大丈夫だろう。NHKのブラタモリで放映された熊本城が大変なことになって
いることが今気がかりである。加藤清正公もさぞご心配のことだろう。


 HN「とあるAKBファン(だった)」さんからのコメントです。(平成28年4月18日付け)

 表題の件について誤りがありますので訂正します。

 マグニチュードの計算方法は40種類以上ありますが、地震学で現在世界的に使用されて
いるのは、断層面の面積や平均変位を用いて計算され、断層運動の規模そのものを算出
できる「モーメントマグニチュード」(Mw)です。

 また、地震波形の振幅を計算に用いることで速報性に優れ、モーメントマグニチュードとも
よく一致する「気象庁マグニチュード」(Mj)が日本の地震情報で用いられ、過去の記録にも
遡って算出されています。

 なお、2011年の東北地方太平洋沖地震の際には、Mj8.4と計算されましたが、マグニチュ
ードが8を超えると頭打ちがおこり規模を適切に表せないことから、頭打ちの起こりにくいモ
ーメントマグニチュードを例外的に用いて、Mw9.0が地震の記録として使用されています。

 阪神・淡路大震災と平成28年熊本地震の本震は、どちらもMj7.3であり、同じ規模の地震
だと報道されています。しかし、モーメントマグニチュードではそれぞれMw6.9、Mw7.0であり、
これに基づいて計算すると、熊本地震の本震のエネルギーは阪神・淡路大震災の約1.4倍
となります。

 ですので、Mw6.9とMj7.3を比較してエネルギーが約4倍とするのは、人の大きさの比較に
身長と座高を用いるのと同様に不適切といえます。


(コメント) マグニチュードにいくつか種類があるとは知りませんでした。ご意見ありがとうご
      ざいました。


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