数学と関係ないところで必要になった、ある計算がちょっと面白かったので、数学の問題
にアレンジして出題。
A と B で、以下のような不平等なゲームを行います。
A は 1 枚のコインを繰り返し投げます。初めて裏が出るまでに連続で表が出た回数を A
の得点とします。
B は 1 個のサイコロを繰り返し投げます。n 回以内に 1 の目が出た回数を B の得点とし
ます。
両者のゲームの得点を比べ、高い方を勝ちとします。
さて、B の勝率が50%以上になるような n の値の最小値は?
(コメント) まずは実験。
例えば、Aの得点が「2」ということは、2連続で表が出て、3回目に裏が出る場合。
Bが勝つためには、Bの得点は「3」以上であればよい。そのためには、
サイコロを3回投げて、3回中に1の目が3回出る
・・・ 3C3(1/6)3=1/216(≒0.004・・・)
サイコロを4回投げて、4回中に1の目が3回出る
・・・ 4C3(1/6)3(5/6)=5/324(≒0.015・・・)
サイコロを5回投げて、5回中に1の目が3回出る
・・・ 5C3(1/6)3(5/6)2=125/3888(≒0.032・・・)
サイコロを6回投げて、6回中に1の目が3回出る
・・・ 6C3(1/6)3(5/6)3=875/11664(≒0.075・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上の実験から、Bの勝つ確率は、単調に増加しているので、50%を超える場合がありそ
うな予感。
...とは言ったものの、サイコロを17、18回投げて1が3回出る確率が最大(0.245・・・)
のようで、とても50%には届かないようである。
GAI さんからのコメントです。(令和5年10月14日付け)
勘違いしているかも知れないが、n=6 と計算上なるようですが・・・・。
DD++ さんからのコメントです。(令和5年10月14日付け)
(コメント)に対して、例えば A が 2 点の場合、b は 3 点「以上」であればよく、3 点ちょうど
である必要はありません。18回を超えると 3 点ちょうどである確率が下がるのは、4 点以上
になることが多くなるからです。3点「以上」である確率はちゃんと単調増加していき、1 に収
束しますよ。
また、そもそも A が 2 点取るのも実はかなり運がいい方の結果です。A がいきなり裏を
出す場合なども考えると、実は勝率 50% には一桁回数で足ります。
GAI さんのコメントに対して、計算してみたところ、n=6 だと、B の勝率は 40.67% くらいのよ
うです。A が確率 1/2 で 0 点になりますが、一方 B が 6 回振っても一度も 1 が出ず引き分
けというオチになる場合が少なからずあり、勝率 50% にはちょっと届かない……という感じで
すかね。
(コメント) DD++ さんからのヒントをもとに再計算してみた。
例えば、Aの得点が「1」ということは、最初に表が出て、2回目に裏が出る場合。
Bが勝つためには、Bの得点は「2」以上であればよい。そのためには、
サイコロを2回投げて、2回中に1の目が2回出る
・・・ 2C2(1/6)2=1/36(≒0.027・・・)
サイコロを3回投げて、3回中に1の目が2〜3回出る
・・・ 3C2(1/6)2(5/6)+3C3(1/6)3=2/27(≒0.074・・・)
サイコロを4回投げて、4回中に1の目が2〜4回出る
・・・ 1−(4C0(5/6)4+4C1(1/6)(5/6)3)=19/144(≒0.131・・・)
サイコロを5回投げて、5回中に1の目が2〜5回出る
・・・ 1−(5C0(5/6)5+5C1(1/6)(5/6)4)=763/3888(≒0.196・・・)
サイコロを6回投げて、6回中に1の目が2〜6回出る
・・・ 1−(6C0(5/6)6+6C1(1/6)(5/6)5)=12281/46656(≒0.263・・・)
サイコロを7回投げて、7回中に1の目が2〜7回出る
・・・ 1−(7C0(5/6)7+7C1(1/6)(5/6)6)=7703/23328(≒0.330・・・)
サイコロを8回投げて、8回中に1の目が2〜8回出る
・・・ 1−(8C0(5/6)8+8C1(1/6)(5/6)7)=663991/1679616(≒0.395・・・)
サイコロを9回投げて、9回中に1の目が2〜9回出る
・・・ 1−(9C0(5/6)9+9C1(1/6)(5/6)8)=2304473/5038848(≒0.457・・・)
サイコロを10回投げて、10回中に1の目が2〜10回出る
・・・ 1−(10C0(5/6)10+10C1(1/6)(5/6)9)
=10389767/20155392(≒0.515・・・)
よって、Aの得点が「1」のとき、B の勝率が50%以上になるような n の値の最小値は、
10 となる。
#かなりな試行回数が必要なんですね!
at さんからのコメントです。(令和5年10月15日付け)
BがAに勝つ確率は、1-(11/12)^n となるようですね。
Aの得点がちょうど k となる確率は、(1/2)^(k+1).
Bの得点が k+1 以上となる確率は、
n!*[x^n]( (exp(x/6))^5*Σ[j=k+1〜∞](x/6)^j/j! )
=n!*[x^n]( exp(5*x/6)*(exp(x/6)-Σ[j=0〜k](x/6)^j/j! )
=n!*[x^n]exp(x) - n!*[x^n]( exp(5*x/6)*Σ[j=0〜k](x/6)^j/j! )
=1-n!*[x^n]( exp(5*x/6)*Σ[j=0〜k](x/6)^j/j! ).
よって、BがAに勝つ確率は、
Σ[k=0〜∞]((1/2)^(k+1))*(1 - n!*[x^n](exp(5*x/6)*(Σ[j=0〜k](x/6)^j/j!))
=1-n!*[x^n]([k=0〜∞]((1/2)^(k+1))*exp(5*x/6)*Σ[j=0〜k](x/6)^j/j!)
=1-n!*[x^n]( exp(5*x/6)*Σ[j=0〜∞]((x/6)^j/j!)*[k=j〜∞](1/2)^(k+1) )
=1-n!*[x^n]( exp(5*x/6)*Σ[j=0〜∞]((x/6)^j/j!)*(1/2)^j
=1-n!*[x^n]( exp(5*x/6)*exp(x/12) )
=1-n!*[x^n]( exp(11x/12) )
=1-(11/12)^n.
DD++ さんからのコメントです。(令和5年10月15日付け)
なるほど、exp(x) の係数としても書けるんですね。本質的には変わりませんが、私は以下
の計算手順を想定していました。
A の得点がちょうど a 点になる確率は、(1/2)^(a+1) です。
B の得点がちょうど b 点になる確率は、反復試行の確率なので、nCb*(1/6)^b*(5/6)^(n-b)
です。
よって、B が勝つ確率は、
Σ[b=1→n] Σ[a=0→b-1] (1/2)^(a+1)*nCb*(1/6)^b*(5/6)^(n-b)
と表されます。これを整理すると、
Σ[b=1→n] Σ[a=0→b-1] (1/2)^(a+1)* nCb*(1/6)^b*(5/6)^(n-b)
= Σ[b=1→n] {1-(1/2)^b}*nCb*(1/6)^b*(5/6)^(n-b)
= Σ[b=0→n] {1-(1/2)^b}*nCb*(1/6)^b*(5/6)^(n-b)
= Σ[b=0→n] { nCb*(1/6)^b*(5/6)^(n-b) - nCb*(1/12)^b*(5/6)^(n-b) }
= (1/6+5/6)^n - (1/12+5/6)^n
= 1-(11/12)^n
なので、1-(11/12)^n ≧ 1/2 から n ≧ log(1/2)/log(11/12) = 0.7966……
つまり、n の最小値は 8 でした。
最初に反復試行の式から現れる nCb*(1/6)^b*(5/6)^(n-b) という形は、いかにも後で二項
定理に使ってくださいという式です。が、いざ実行するときには、 nCb*(1/12)^b*(5/6)^(n-b)
と中身が変わっているという。
二項展開されたものを元に戻す計算はよくある計算ですが、こういうパターンは珍しいよう
に思い、出題しました。
なお、実はこの問題、もっとあっさりした計算で答えを出す道もあります。
このゲームは A が先にプレイしようが B が先にプレイしようが、はたまた同時にプレイしよ
うが結果には影響しません。
そこで、「とりあえず B がプレイしていって、k 回目に 1 の目が出たときに A が k 回目の
コインを投げる」という方法でプレイすることにします。
すると、B が m 回投げた段階でまだ勝敗がわからない条件のもとで、m+1 回目で B の勝
利が確定する条件付き確率は常に (1/6)(1-1/2)=1/12 です。
よって、n 回サイコロを投げて B が勝利できない確率は、(11/12)^n となり、B の勝率は、
1-(11/12)^n となります。
(コメント) なるほど!美しい計算ですね。
at さんからのコメントです。(令和5年10月15日付け)
DD++さん、コメントありがとうございます。様々な解法があるのですね。勉強になります。
以下、工事中!