平面幾何を解析的に探究していた際に、次のような3次実対称行列のある命題命題(予
想)に出会いました。平面幾何ではなくただの代数の命題です。真偽が知りたくて証明して
みたけれど、場合分けしたりしてかなり手間取りました。(私の証明にミスがなければ真です。)
ひょっとしたらもっと簡単に示す方法があるのかもしれないと思ったので、もし何か閃いた
方がいたら教えてください。私がした証明はしばらくしてから書き込もうと思います。
(ただし、PCに打ち込む気力があれば、ですが……。)
t(・)で転置を表すことにします。行列Aの(i,j)成分を a[i,j] のように書きます。
Aをランク2の半正定値3次実対称行列とし、Aの固有値0に対する固有ベクトルをbとする。
Pは、3次実対称行列で、Pの余因子行列を adj(P) とする。
このとき、Σ[i=1..3]Σ[j=1..3] a[i,j]p[i,j] =0 ならば、t(b)adj(P)b≦0 である。
わかりにくいと思うので、上の命題に具体的数値※を入れて一例を作ってみたものも載せ
ておきます。(私が証明の道筋を考えるときに使用した具体例です。)
u、v、w、x、y、z ∈ R 、u+v+w=x+y+z ならば、
uv+vw+wu−x^2−y^2−z^2+2(xy+yz+zx−ux−vy−wz)≦0
※A={(1,-1/2,-1/2),(-1/2,1,-1/2),(-1/2,-1/2,1)}、t(b)=(1,1,1) 、P={(u,z,y),(z,v,x),(y,x,w)}
DD++ さんからのコメントです。(令和5年10月5日付け)
固有ベクトル b は実数で正規化されていると思っていいんですよね?好きなものを採用し
ていいとなると、虚数倍したものを持ってこれちゃいますし。
多分これでできてると思いますが、大丈夫かな?
(1) A が対角行列で a[3,3] = 0 の場合
A = diag( λ[1], λ[2], 0 ) とします。A はランク2で正定値なので、λ[1] とλ[2] は正の数
です。
このとき仮定は、λ[1]*p[1,1] + λ[2]*p[2,2] = 0 となり、変形すると、
2*λ[1]*λ[2]*p[1,1]*p[2,2] = - (λ[1]*p[1,1])^2 - (λ[2]*p[2,2])^2 ≦ 0
2*λ[1]*λ[2] は正なので、p[1,1]*p[2,2] ≦ 0 となります。
また、b = t( 0, 0, ±1 ) より、t(b)*adj(P)*b は単純に adj(P) の [3,3] 成分を意味するので、
t(b)*adj(P)*b = p[1,1]*p[2,2] - p[1,2]^2 ≦ 0
となります。等号成立は、p[1,1] = p[2,2] = p[1,2] = 0 のときに限ります。
b と垂直な平面が P によって b と平行な直線または点に変換されること、と言え変えられ
ますね。
(2) A がそれ以外の場合
A は実対称行列なので直交行列 M で対角化でき、D = t(M)*A*M となります。
ただし、D は対角行列であり、d[3,3] = 0 となるように対角化することします。
A が3次の半正定値ランク2なので、D も3次の半正定値ランク2で、また、D は対角行列
ですから明らかに対称行列です。また、このとき、t(M)*b は D の固有値 0 に対応する固
有ベクトルです。
ここで、Q = t(M)*P*M とおくと、これは、3次実対称行列です。変形すると、P = M*Q*t(M)
です。
このとき、 tr(t(D)*Q) = tr(D*Q) = tr(t(M)*A*P*M) = tr(A*P) = tr(t(A)*P)
また、t(b)*adj(P)*b = t(b)*adj(M*Q*t(M))*b = t(b)*adj(t(M))*adj(Q)*adj(M)*b
= t(b)*M*adj(Q)*t(M)*b = t(t(M)*b)*adj(Q)*t(M)*b
となるので、D を A と、Q を P と、t(M)*b を b と読み替えることで (1) に帰着します。
等号成立条件は、t(M)*b と垂直な平面が Q = t(M)*P*M によって t(M)*b と平行な直線
または点に変換されること、つまり、結局、b と垂直な平面が P によって b と平行な直線ま
たは点に変換されること、です。
#もとの幾何の問題が何かはわかりませんけど、何か意味のありそうな条件に見えますね。
りらひいさんからのコメントです。(令和5年10月6日付け)
DD++さん、ありがとうございます。とても参考になりました。
前回投稿した後に再考している中で、
「対角化したら1パターンのみ考えるだけでいいのでは?」
と思っていたところだったので、実際その通りに証明できることがわかってよかったです。
私が行った証明は、場合分けしたうえでの成分計算ごり押しみたいな感じなので、もっと本
質を突いた証明がありそうだと思って書き込んだのでした。
固有ベクトル b は実数で正規化されていると思っていいんですよね?好きなものを採用し
ていいとなると、虚数倍したものを持ってこれちゃいますし。
もともと私はすべて実数範囲で計算していたので、「固有ベクトルbは実ベクトル」とする条
件を明示し忘れました。申し訳ありません。実数で正規化されている場合が示されれば b を
実数倍しても成り立つことは明らかなので、これで大丈夫です。
このとき、 tr(t(D)*Q) = tr(D*Q) = tr(t(M)*A*P*M) = tr(A*P) = tr(t(A)*P)
Σ[i=1..3]Σ[j=1..3]a[i,j]p[i,j] が tr(t(A)P) と書けることには気づきませんでした。
実は前回書き込んだ後で、Σ[i=1..3]Σ[j=1..3]a[i,j]p[i,j] よりも Σ[i=1..3]Σ[j=1..3]a[i,j]p[j,i]
の方が(座標計算上)本質に近い計算だと感じていたのですが、この式を見てその感覚が正
しかったとはっきりとわかりました。
#もとの幾何の問題が何かはわかりませんけど、何か意味のありそうな条件に見えますね。
もともとこの命題が幾何の問題だったというわけではないです。私は、斉次座標(射影座標)
で平面幾何のいろいろな計算をしているのですが、もともとは、
「双曲線Cが条件◆をみたすとき直角双曲線になる」
という定理があって、ここで、もし、
「非退化二次曲線Cが条件◆をみたすならば双曲線である」
という命題が真ならば、
「非退化二次曲線Cが条件◆をみたすとき直角双曲線になる」
と言い換えられるよなと思ったことがきっかけです。
私が提示した命題により、
「広義の二次曲線Cが条件◆をみたすならば楕円ではない」
ことが言え、さらに、等号成立条件を考察することにより、
「条件◆をみたすものは放物線ではない」
ことも言えるので、予想した言い換えが可能ということになります。
これ以上書いても多分ちんぷんかんぷんだとは思いますが、一応要点だけ書いておきま
すね。
行列 A は、斉次座標系を定めると決まる行列(直線の直交などユークリッド的性質の計算
に使用できる)。
ベクトル b は、無限遠直線の式の係数に対応している。
列ベクトル x が点の斉次座標に対応しているとすると、t(x)Px=0 は広義の二次曲線を表
す。
行列Pが正則かつ不定値のとき、t(x)Px=0 は非退化二次曲線であり、t(b)adj(P)b が正
ならば、楕円、0 ならば、放物線、負ならば、双曲線になる。
上で書いた条件◆は、Σ[i=1..3]Σ[j=1..3]a[i,j]p[i,j]=0 である。
条件◆をみたし、かつ、t(b)adj(P)b=0 となる場合、Pが正則ではなく t(x)Px=0 が退化する
ことが示せる。
(参考) 行列Aの具体例
デカルト座標を斉次化した座標系 → A=((1,0,0),(0,1,0),(0,0,0))
三角形ABCを基準とする重心座標系 → A=((a^2,-S_C,-S_B),(-S_C,b^2,-S_A),(-S_B,-S_A,c^2))
三角形ABCを基準とする三線座標系
→ A=((1,-cos∠C,-cos∠B),(-cos∠C,1,-cos∠A),(-cos∠B,-cos∠A,1))
ただし、
a=BC, b=CA, c=AB, S_A=(-a^2+b^2+c^2)/2, S_B=(a^2-b^2+c^2)/2, S_C=(a^2+b^2-c^2)/2
行列Aを使用した計算の例
実ベクトル l、m が直線の式の係数に対応しているとする。
直線 t(l)x=0 と直線 t(m)x=0 が直交する ⇔ t(l)Am=0
DD++ さんからのコメントです。(令和5年10月6日付け)
斉次座標系には明るくないので頓珍漢なことを言ってたらすみませんが、
直線 t(l)x=0 と直線 t(m)x=0 が直交する ⇔ t(l)Am=0
これって、座標系を空間的に捉えれば、まさに、
「b と垂直な平面が P によって b と平行な直線または点に変換されること」
この例の文字割り当てで言えば
「m と垂直な平面が A によって m と平行な直線または点に変換されること」
という話ではないんですか?
りらひいさんからのコメントです。(令和5年10月7日付け)
DD++さんが言いたいことがどんなことなのかをずっと考えているのですが、どうしても意味
がつかめません。すみません。
もともとの命題の等号成立条件
「b と垂直な平面が P によって b と平行な直線または点に変換されること」
に関しては理解できます。
等号成立条件は、任意の実ベクトル c を用いて、P = (b*t(c)+c*t(b))/2 と表されること
といえるため、b と垂直なベクトルを n とすると、
P*n = (b*t(c)*n+c*t(b)*n)/2 = {(t(c)*n)/2}*b
となることからわかります。
残りの内容がどんな意味合いなのかわかりませんでした。
そもそも私が余計な内容を書き込んだことがよくなかったと反省しています。
「もともとこの命題が……」以降はこのスレッドでの本題から大きく外れすぎているので削除
したいと思います。申し訳ございません。
りらひいさんからのコメントです。(令和5年10月8日付け)
DD++さんの証明を参考にすることで、真偽がわからず保留となっていた次の命題も対角化
を利用して証明できました。ありがとうございます。
Aをランク2の半正定値3次実対称行列とする。Pは3次実対称行列とする。このとき、
Σ[i=1..3]Σ[j=1..3]a[i,j]p[j,i]=0 ならば、
Pは不定値行列(半正定値でも半負定値でもない行列)またはランクが1以下の行列である。
DD++ さんからのコメントです。(令和5年10月8日付け)
私も書いていて何か違和感あったんですが、間違いにやっと気付きました。
「b と垂直な平面が P によって b と平行な直線または点に変換されること」
は、私は式としては、
「b と垂直な任意のベクトル l、m に対して t(l)*P*m=0 」
をイメージしていました。ならば、この例の文字割り当てで言うならば、m ではなく、l とも m
とも垂直な第三のベクトル n に対して成り立つと記述するべきでした。すみません。
まあ、記述を修正したとしても、元々ただの無根拠な思いつきで書いたものでしかなく、変
に掘ってみても何の価値もない可能性が高いです。
DD++さんの証明を参考にすることで、真偽がわからず保留となっていた次の命題も対角
化を利用して証明できました。
思わぬ副産物があったようで、お役に立てて嬉しく思います。
以下、工事中!