・23年度大学入学共通テスト                S.H 氏

 3回目の大学入学共通テストが令和5年1月14日・15日の両日、約51万人の受験生に
対して行われた。昨年度の著しい難化を反省したのか、良心的な問題が多かった。

 18日発表の平均点中間集計によれば、数学I・Aの平均点は、58.08点(昨年度は、
37.96点)、数学II・Bは、64.86点(43.06点)で、それぞれ20点ほどアップする予想だ。

 2月6日に大学入試センターより、平均点の発表があった。
 数学I・Aは、55.65点(昨年度は、37.96点)、数学II・Bは、61.48点(43.06点)

 今年も面白そうな問題をいくつか取り上げ、挑戦したいと思う。問題文は一部改題です。

 まずは、受験生が不得手な空間図形の問題です。空間とは言うものの、実質は、三角比
の問題です。

【 数学I・A 】

第1問[2](2) 半径5の球面S上に、3点P、Q、Rをとり、PQ=8、QR=5、RP=9とす
 る。球面上の点Tで、三角錐T-PQRの体積が最大であるとする。この最大値を求めるた
 めに、次の問いに答えよ。
(イ) △PQRを求めよ。
(ロ) Tから△PQRに垂線を下ろし、その足をHとするとき、THの長さを求めよ。
(ハ) 三角錐T-PQRの体積を求めよ。

    

(解)(イ) cosP=(82+92−52)/(2・8・9)=5/6 より、sinP=√11/6 なので、

  △PQR=(1/2)・8・9・√11/6=6√11

(ロ) 題意より、球面Sの中心をSとすると、SP=SQ=SR なので、 HP=HQ=HR

 よって、点Hは△PQRの外接円の中心である。正弦定理より、

 2PH=5/sinP=30/√11 なので、 PH=15/√11

 よって、 TH=5+√(52−PH2)=5+5/√11

(ハ) 三角錐T-PQRの体積

  =(1/3)・6√11・(5+5/√11)=10(√11+)  (終)


 第2問[1]はデータ分析の問題で、言葉の意味が分かっていれば即答できる問題ばかり
である。問題文が冗長すぎて、他の問題との難易バランスが取れていない。

 [2]は2次関数の問題で、特に複雑な計算は要求されていない。最後の「ボール何個分」
の計算では、電卓を使うまでもないが若干煩雑である。受験生で電卓利用による不正行為
があったとのことだが、ここで使ったのだろうか。

 第3問〜第5問は選択問題である。2問を選択し解答すればよい。

第3問  番号によって区別された複数の球が、何本かのひもでつながれている。ただし、
     各ひもはその両端で二つの球をつなぐものとする。次の条件を満たす球の塗り分け
     方(以下、球の塗り方)を考える。
【条件】 ・それぞれの球を、用意した5色(赤、青、黄、緑、紫)のうちのいずれか1色で塗る。
     ・1本のひもでつながれた二つの球は異なる色になるようにする。
     ・同じ色を何回使ってもよく、また使わない色があってもよい。

(1) 下図において、球の塗り方は何通りあるか。

  

(2) 下図において、球の塗り方は何通りあるか。

    

(3) 下図における球の塗り方のうち、赤をちょうど2回使う塗り方は何通りあるか。

   

(4) 下図における球の塗り方のうち、赤をちょうど3回使い、かつ青をちょうど2回使う塗り
   方は何通りあるか。

  

(5) 下図において、球の塗り方の総数を求めるために、次の構想を立てる。

   

【構想】 次の2つの図を比較する。

       

 右図では球3と球4が同色になる球の塗り方が可能であるため、左図よりも右図の球の塗
り方の総数の方が大きい。

 右図における球の塗り方は、(1)における球の塗り方と同じである。そのうち球3と球4が
同色になる球の塗り方の総数と一致する図を示し、左図における球の塗り方の総数を求め
よ。

(6) 下図において、球の塗り方は何通りあるか。

   

(解)(1) 5×4×4×4=320(通り)

(2) 5×4×3=60(通り)

(3) @B または AC が赤で、2通り

   その1通りに対して、残りの塗り方は、4×4=16(通り)

  以上から、求める塗り方は、 2×16=32(通り)

(4) 赤青は@には入り得ず、ABCDEのうち、3個は赤の場合の数は、53=10(通り)

 ABCDE の残り2個に青が入り、@の塗り方は、 3通り

  以上から、求める塗り方は、 10×3=30(通り)

(5) 右図における球の塗り方は、320通りあり、そのうち球3と球4が同色になる球の塗
   り方の総数と一致する図は、

   

で、60通りある。よって、求める塗り方は、 320−60=260(通り)

(6) (5)と同様にして、

       

の両者を比較して考える。右図の塗り方は、5×4×4×4×4=1280(通り)

 このうち、球4と球5が同色になる球の塗り方の総数と一致する図は、

   

で、260通りある。よって、求める塗り方は、 1280−260=1020(通り)  (終)


(コメント) 問題文が冗長で、問題に深みが感じられない。


第4問  色のついた長方形を並べて正方形や長方形を作ることを考える。色のついた長
     方形は、向きを変えずにすき間なく並べることとし、色のついた長方形は十分ある
     ものとする。

    

(1) 横の長さが462で縦の長さが110である赤い長方形を横に並べて正方形や長方形を
  作ることを考える。

 (イ) 462と110の両方を割り切る素数のうち最大のものを求めよ。

 (ロ) 赤い長方形を並べて作ることができる正方形のうち、辺の長さが最小であるものの
    一辺の長さを求めよ。

 (ハ) 赤い長方形を並べて正方形ではない長方形を作る。462の約数と110の約数を考え
    て、横の長さと縦の長さの差の絶対値の最小値を求めよ。

 (ニ) 縦の長さが横の長さより(ハ)の最小値だけ長い長方形のうち、横の長さの最小値
    を求めよ。

(2) 花子さんと太郎さんは、(1)で用いた赤い長方形を1枚以上並べて長方形を作り、そ
   の右側に横の長さが363で縦の長さが154である青い長方形を1枚以上並ベて、正方
   形や長方形を作ることを考えている。

    

 このとき、赤い長方形を並べてできる長方形の縦の長さと、青い長方形を並べてできる長
方形の縦の長さは等しい。このとき出来る長方形の縦の長さの最小値を求めよ。
(一般の長方形は、縦の長さは、縦の長さの最小値の倍数となる。)

 二人は、次のように話している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
花子:赤い長方形と青い長方形を(2)のように並べて正方形を作ってみようよ。

太郎:赤い長方形の横の長さが462で青い長方形の横の長さが363だから、正方形の横の
   長さは462と363を組み合わせて作ることができる長さでないといけないね。

花子:正方形だから、横の長さは縦の長さの最小値の倍数でもないといけないね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(イ) 462と363の最大公約数を求めよ。

(ロ) (イ)の倍数のうちで縦の長さの最小値の倍数でもある最小の正の整数を求めよ。

(ハ) これらのことと、使う長方形の枚数が赤い長方形も青い長方形も1枚以上であること
   から、(2)の正方形のうち、辺の長さが最小であるもときの一辺の長さを求めよ。

(解)(1)(イ) 462=2・3・7・11 、110=2・5・11 より、462と110の両方を割り切る素数のうち

  最大のものは、11である。

(ロ) 462×110の長方形を横にm個、縦にn個並べて正方形を作る。

  このとき、462m=110n より、求める長さの最小値は、462と110の最小公倍数である。

 最小公倍数は、2・3・5・7・11=2310 なので、辺の長さが最小の正方形の一辺の長さは、

 2310である。

(ハ) 横の長さは、462×m=22×21m 縦の長さは、110×n=22×5n なので、

  横の長さと縦の長さの差は、 22×(21m−5n) となる。

  21と5は互いに素なので、21m−5n=±1 となる整数m、nが必ず存在する。

 したがって、横の長さと縦の長さの差の絶対値の最小値は、22である。

(ニ) 縦の長さが横の長さより22だけ長い長方形を考えるので、

  22×(21m−5n)=−22 すなわち、 5n−21m=1

  5・(−4)−21・(−1)=1 より、 5(n+4)=21(m+1)

 5と21は互いに素なので、m+1は5の倍数 よって、mは自然数なので、最小値は、m=4

 以上から、求める横の長さは、 462×4=1848

(2) 題意より、 110×m=154×n すなわち、 5m=7n なので、mは7の倍数

  最小値は、m=7 なので、縦の長さの最小値は、110×7=770

(イ) 462=2・3・7・11 、363=3・11・11 なので、 462と363の最大公約数は、33

(ロ) 33と770の最小公倍数は、2310である。

(ハ) 横方向に、赤い長方形を x 枚、青い長方形を y 枚使うとすると、

   正方形の1辺の長さ 462・x+363・y は、462と363の最大公約数33の倍数で、かつ、

  770の倍数でなければならないので、33と770の最小公倍数2310の倍数となる。

  よって、462・x+363・y=2310n すなわち、 14・x+11・y=70n と書ける。

  11・y=14(5n−x)で、y は14の倍数なので、y=14s とおくと、

  5n−x=11s すなわち、x=5n−11s となる。

  x、yは1以上が条件なので、最小性も加味して、s=1、n=3 とすればよい。

 このとき、 x=4、y=14 で、1辺の長さの最小値は、 2310×3=6930  (終)


(コメント) 整数問題の正統派で、重量感がありますね!読解力が必要な問題でした。


第5問 (1) 円Oに対して、次の手順1で作図を行う。

【手順1】
(Step 1) 円Oと異なる2点で交わり、中心Oを通らない直線Lを引く。円Oと直線Lとの交点
     をA、Bとし、線分ABの中点Cをとる。
(Step 2) 円Oの周上に、点Dを∠CODが鈍角となるようにとる。直線CDを引き、円Oとの交
     点でDとは異なる点をEとする。
(Step 3) 点Dを通り直線OCに垂直な直線を引き、直線OCとの交点をFとし、円Oとの交点
     でDとは異なる点をGとする。
(Step 4) 点Gにおける円Oの接線を引き、直線Lとの交点をHとする。

  

 このとき、直線Lと点Dの位置によらず、直線EHは円Oの接線であることを、次の構想に
基づいて説明せよ。

【構想】 直線EHが円Oの接線であることを証明するためには、∠OEH=90°であること
     を示せぱよい。

(2) 円Oに対して、(1)の手順1とは直線Lの引き方を変え、次の手順2で作図を行う。

【手順2】
(Step 1) 円Oと共有点をもたない直線Lを引く。中心Oから直線Lに垂直な直線を引き、直
     線Lとの交点をPとする。
(Step 2) 円Oの周上に、点Qを∠POQが鈍角となるようにとる。直線PQを引き、円Oとの交
     点でQとは異なる点をRとする。
(Step 3) 点Qを通り直線OPに垂直な直線を引き、円Oとの交点でQとは異なる点をSとする。
(Step 4) 点Sにおける円Oの接線を引き、直線Lとの交点をTとする。

  

 このとき、次の問いに答えよ。

(イ) ∠PTS の大きさを求めよ。

(ロ) 円Oの半径がで、OT=3であるとき、3点O、P、Rを通る円の半径とRTを求
   めよ。


(解)(1) 【手順1】の(Step 1)と(Step 4)により、∠OCH=∠OGH=90°なので、

  4点C、G、H、Oは同一円周上にある。 よって、∠CHG=∠FOG である。

 一方、円周角と中心角の関係から、∠FOG=∠CEG である。

 よって、∠CHG=∠CEG であるので、4点C、G、H、Eは同一円周上にある。

 この円は点Oを通り、円に内接する四角形の性質より、∠OEH=∠OGH=90°である。

(2)(イ) 4点O、P、T、Sは同一円周上にあるので、 ∠PTS=(1/2)∠QOS=∠QRS

(ロ) (イ)より、4点P、T、S、Rは同一円周上にあり、この円は点Oを通る。

 ∠OST=90°より、3点O、P、Rを通る円の直径はOT=3である。

 よって、半径は、(3/2)である。

 ∠ORT=90°で、三平方の定理より、 RT2=OT2−OR2=54−5=49 なので、

 RT=7 となる。  (終)


(コメント) 中心角の半分が円周角に等しいという事実が効果的に要求されていますね!


 次は、【数学II・B 】の問題に挑戦です。

【 数学II・B 】

第1問[1](2) sin x と sin 2x の値の大小関係を詳しく調べよう。

 sin 2x - sin x = 2sin x cos x - sin x = sin x (2cos x - 1) であるから、

  sin 2x - sin x >0 が成り立つことは、

 「sin x > 0 かつ 2cos x - 1> 0」 ・・・ @

または

 「sin x < 0 かつ 2cos x - 1< 0」 ・・・ A

が成り立つことと同値である。

 0 ≦x≦2π のとき、@、Aが成り立つような x の値の範囲をそれぞれ求めよ。

(3) sin 3x と sin 4x の値の大小関係を調べよう。

 三角関数の加法定理を用いて、等式 sin (α+β) - sin (α-β)= 2cosαsinβ ・・・ B

が得られる。α+β = 4x 、α-β = 3x を満たすα、βに対してBを用いることにより、

 sin 4x - sin 3x > 0 が成り立つことは

 「cos (7/2)x > 0 かつ sin (1/2)x > 0」 ・・・ C

または

 「cos (7/2)x < 0 かつ sin (1/2)x < 0」 ・・・ D

が成り立つことと同値である。

 0 ≦x≦π のとき、sin 4x > sin 3x が成り立つような x の値の範囲を求めよ。

(4) (2)(3)の考察から、0 ≦x≦π のとき、sin 3x > sin 4x > sin 2x が成り立つような
   x の値の範囲を求めよ。

(解)[1](2) 0 < x < π/3 、π < x < 5π/3

(3) 0 ≦x≦π のとき、0 ≦(7/2)x≦(7/2)π なので、cos (7/2)x > 0 となるのは、

  0 < (7/2)x < π/2 、(3/2)π < (7/2)x < (5/2)π

 すなわち、 0 < x < π/7 、(3/7)π < x < (5/7)π

同様に、 0 ≦(1/2)x≦(1/2)π のとき、 sin (1/2)x > 0 となるのは、

 0 <(1/2)x≦(1/2)π すなわち、 0 <x ≦π

以上から、Cの解は、 0 < x < π/7 、(3/7)π < x < (5/7)π

 また、0 ≦(1/2)x≦(1/2)π から、Dの解はない。

よって、sin 4x > sin 3x が成り立つような x の値の範囲は、

  0 < x < π/7 、(3/7)π < x < (5/7)π

(4) (2)(3)より、sin 3x > sin 4x が成り立つような x の値の範囲は、

  π/7 < x < (3/7)π 、(5/7)π < x < π

 また、sin 4x > sin 2x が成り立つような x の値の範囲は、

  0 < 2x < π/3 、π < 2x < 5π/3

すなわち、 0 < x < π/6 、π/2 < x < 5π/6

よって、sin 3x > sin 4x > sin 2x が成り立つような x の値の範囲は、

  π/7 < x < π/6 、(5/7)π < x < (5/6)π  (終)

[2](1) a> 0 、a≠1、b> 0 のとき、log b = x とおくとき、b を a と x で表せ。

(2) 様々な対数の値が有理数か無理数かについて考えよう。

(イ) log5 25 、log9 27 を求め、どちらも有理数であることを示せ。

(ロ) log2 3 が有理数と無理数のどちらであるかを考えよう。

 log2 3 が有理数であると仮定すると、log2 3 > 0 であるので、二つの自然数 p、q を用

いて log2 3 = p/q と表すことができる。このとき、(1)により、2^p = 3^q と変形できる。い

ま、2 は偶数であり 3 は奇数であるので、2^p = 3^q を満たす自然数 p、q は存在しない。

したがって、log2 3 は無理数であることがわかる。

 a、bを 2 以上の自然数とするとき、上と同様に考えて、log b がつねに無理数であるた

めの条件を調べよ。

(解)(1) b=a である。

(2)(イ) log5 25 = 2 、log9 27 = 3/2 で、どちらも有理数である。

(ロ) a、b のいずれか一方が偶数で、もう一方が奇数であればよい。  (終)


第2問[1](1) kを正の定数とし、3次関数 f(x) = x^2(k - x ) を考える。

(イ) y = f(x) のグラフと x 軸との共有点の座標を求めよ。

(ロ) f(x) の導関数 f’(x)を求めよ。

(ハ) 極値とそれを与える x の値を求めよ。

(解)(イ) x^2(k - x ) = 0 から、x = 0 、k

  よって、x 軸との共有点の座標は、(0 ,0)、(k ,0)

(ロ) f’(x) = 2kx-3x^2

(ハ) 2kx-3x^2 = 0 より、 x = 0 、2k/3

   x = 0 のとき、f(x) は極小値 0 をとる。

   x = 2k/3 のとき、f(x) は極大値 4k^3/27 をとる。  (終)

(2) 下図のように底面が半径 9 の円で高さが 15 の円錐に内接する円柱を考える。

   

(イ) 円柱の底面の半径と体積をそれぞれれ x 、V とする。Vを x の式で表せ。

(ロ) (1)の考察より、Vが最大になる x の値を求めよ。また、Vの最大値を求めよ。

(解)(イ) 円柱の高さをhとすると、 9 : 15 = x : 15-h なので、

  9(15-h) = 15x より、 h = 15 - (5/3)x

 よって、 V = πx^2・h = (5/3)πx^2(9 - x )  (0 < x < 9)

(ロ) (1)より、x = 6 のとき、Vは最大で、最大値は、180π  (終)

[2](1) 次の問いに答えよ。

(イ) 定積分 ∫030 (x/5+3)dx を求めよ。

(ロ) 不定積分 ∫((x^2)/100-x/6+5)dx を求めよ。ただし、積分定数はCとする。

(解)(イ) ∫030 (x/5+3)dx = [(x^2)/10+3x]030 = 180

(ロ) ∫((x^2)/100-x/6+5)dx = (x^3)/300-x^2/12+5x+C

(2) ある地域では、毎年3月頃「ソメイヨシノの開花予想日」が話題になる。太郎さんと花子
  さんは、開花日時を予想する方法の一つに、2月に入ってからの気温を時間の関数とみ
  て、その関数を積分した値をもとにする方法があることを知った。ソメイヨシノの開花日時
  を予想するために、二人は、6時間ごとの気温の折れ線グラフを見ながら、次のように考
  えることにした。

 x の値の範囲を0以上の実数全体として、2月1日午前0時から24x時間経った時点を x 日
後とする。また、x 日後の気温を y ℃とする。このとき、y は x の関数であり、これを y = f(x)
とおく。ただし、y は負にはならないものとする。

 気温を表す関数 f(x) を用いて二人はソメイヨシノの開花日時を次の設定で考えることにし
た。

【設定】 正の実数 t に対して、f(x) を 0 から t まで積分した値をS(t)とする。すなわち、
    S(t) = ∫0t f(x)dx とする。このS(t)が 400 に到達したとき、ソメイヨシノが開花する。

 【設定】のもと、太郎さんは気温を表す関数 y = f(x) のグラフを直線とみなしてソメイヨシノ
の開花日時を考えることにした。

(イ) 太郎さんは f(x) = x/5 + 3 (x≧ 0) として考えた。このとき、ソメイヨシノの開花日時
   は 2 月に入ってから何日後となるか。

(ロ) 太郎さんと花子さんは、2 月に入ってから 30 日後以降の気温について話をしている。

 太郎:1次関数を用いてソメイヨシノの開花日時を求めてみたよ。
 花子:気温の上がり方から考えて、2 月に入ってから 30 日後以降の気温を表す関数が
    2次関数の場合も考えてみようか。

 花子さんは気温を表す関数 f(x) を、0 ≦ x ≦ 30 のときは太郎さんと同じように

 f(x) = x/5 + 3 ・・・ @

とし、x ≧ 30 のときは = (x^2)/100-x/6+5 ・・・ A

として考えた。なお、x = 30 のとき @の右辺の値とAの右辺の値はー致する。花子さんの

考えた式を用いて、ソメイヨシノの開花日時を考えよう。

(1)より ∫030 (x/5+3)dx = 180 であり、∫3040 ((x^2)/100-x/6+5)dx = 115 となる

ことがわかる。また、x ≧ 30 の範囲において f(x) は増加する。よって

 ∫3040 ((x^2)/100-x/6+5)dx < ∫4050 ((x^2)/100-x/6+5)dx

である。このとき、ソメイヨシノの開花日時は 2 月に入ってから何日後となるか。

(解)(イ) ∫0t (x/5+3)dx = (t^2)/10+3t = 400 より、 (t^2) + 30t - 4000 = 0

これを解いて、t = 50 なので、ソメイヨシノの開花日時は 2 月に入ってから 50日後となる。

(ロ) ∫030 (x/5+3)dx = 180 で、∫3040 ((x^2)/100-x/6+5)dx = 115

 さらに、∫4050 ((x^2)/100-x/6+5)dx = 178+1/3 なので、S(t)が 400 に到達する t は

 40< t <50 である。よって、ソメイヨシノの開花日時は 2 月に入ってから 40 日後より後、

かつ 50 日後より前となる。


(コメント) (ロ)では、∫4050 ((x^2)/100-x/6+5)dx の計算をしたが、40 日後の気温の
      上昇を考えれば、開花日時が 50 日後より前になることは明らかだろう。計算は
      不要だったということだ。

  文章量が非常に多い割りに問われる内容が乏しく、時間制約のある試験問題としては
 不適切ではないだろうか。


 第3問〜第5問は選択問題である。2問を選択し解答すればよい。

第3問 以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて正規分布表を用いてもよい。

(1) ある生産地で生産されるピーマン全体を母集団とし、この母集団におけるピーマン1個
  の重さ(単位は g )を表す確率変数をXとする。mとσを正の実数とし、Xは正規分布
  N(m,σ^2)に従うとする。

(イ) この母集団から1個のピーマンを無作為に抽出したとき、重さが m g 以上である確率
  P(X≧m) を求めよ。

(ロ) 母集団から無作為に抽出された大きさ"の標本 X1,X2,・・・,Xn の標本平均を
  する。の平均(期待値) E()と標準偏差 σ()をそれぞれ求めよ。

(ハ) n = 400 、標本平均が 30.0 g 、標本の標準偏差が 3.6 g のとき、mの信頼度 90 %
  の信頼区間を次の方針で求めよう。

【方針】 Zを標準正規分布 N( 0 , 1 )に従う確率変数として、P( -z0 ≦Z≦ z0 ) = 0.901 と
    なる z0 を正規分布表から求める。この z0 を用いるとmの信頼度 90.1 % の信頼区
    間が求められるが、これを信頼度 90 % の信頼区間とみなして考える。

 【方針】における z0 を求めよ。

 一般に、標本の大きさnが大きいときには、母標準偏差の代わりに、標本の標準偏差を用
いてよいことが知られている。

(ニ) n = 400 は十分に大きいので、【方針】に基づいて、mの信頼度 90 % の信頼区間を
  求めよ。

(解)(イ) P(X≧m) = P((X - m)/σ≧ 0 ) = 1/2

(ロ) E() = m 、σ() = σ/√n

(ハ) 標準正規分布表から、P( 0 ≦Z≦ 1.65 ) = 0.901÷2 = 0.4505 なので、z0 = 1.65

(ニ) - 1.65 ≦(30.0 - m)/(3.6/√400)≦1.65 より、

   - 1.65 × 0.18 ≦30.0 - m≦ 1.65 × 0.18

 即ち、 30.0 - 0.297 ≦ m ≦ 30.0 - 0.297 より、 29.703 ≦ m ≦ 30.297

 よって、 29.7 ≦ m ≦ 30.3 と言える。  (終)

(2) (1)の確率変数Xにおいて、m = 30.0、σ = 3.6 とした母集団から無作為にピーマン
  を1個ずつ抽出し、ピーマン2個を1組にしたものを袋に入れていく。このようにしてピー
  マン2個を1組にしたものを 25 袋作る。その際、1袋ずつの重さの分散を小さくするため
  に、次のピーマン分類法を考える。

【ピ−マン分類法】
 無作為に抽出したいくつかのピーマンについて、重さが 30.0 g 以下のときをSサイズ、
30.0 g を超えるときはLサイズと分類する。そして、分類されたピーマンからSサイズとLサ
イズのピーマンを一つずつ選ぴ、ピーマン2個を1組とした袋を作る。

(イ) ピーマンを無作為に 50 個抽出したとき、【ピーマン分類法】で 25 袋作ることができる
  確率 p0 を考えよう。無作為に1個抽出したピーマンがSサイズである確率を求めよ。

(ロ) ピーマンを無作為に 50 個抽出したときのSサイズのピーマンの個数を表す確率変数
  をU0とすると、U0は二項分布B(50 ,1/2)に従うことから、p0 を求めよ。

 p0 を計算すると、p0 = 0.1122・・・ となることから、ピーマンを無作為に 50 個抽出したと
き、25 袋作ることができる確率は 0.11 程度とわかる。

 【ピーマン分類法】で 25 袋作ることができる確率が 0.95 以上となるようなピーマンの個数
を考えよう。

 kを自然数とし、ピーマンを無作為に (50 + k) 個抽出したとき、Sサイズのピーマンの個数
を表す確率変数をUとすると、Uは二項分布B(50 + k ,1/2)に従う。

 (50 + k) は十分に大きいので、Uは近似的に正規分布N(m,σ2)に従う。

(ハ) m、σを求めよ。

(ニ) Y=(U−m)/σ とすると、Yは近似的に標準正規分布N( 0 , 1 )に従う。

 このとき、【ピーマン分類法】で、25 袋作ることができる確率 pk を求めよ。

(ホ) k = α 、√(50 + k)=β とおく。

 pk≧ 0.95 になるような α/β について、正規分布表から α/β≧1.96 を満たせばよい

ことが分かる。ここでは、α/β≧ 2 ・・・ @ を満たす自然数 k を考えることとする。

 @の両辺は正であるから、α2≧4β2 を満たす最小の k を k0 とするとき、k0 の値を

求めよ。ただし、k0 の計算においては、√51 = 7.14 を用いてもよい。

したがって、少なくとも (50 + k0)個のピーマンを抽出しておけば、【ピーマン分類法】で 2 5袋

作ることができる確率は 0. 95 以上となる。

(解)(イ) 50 個のうち 25 個はSサイズなので、求める確率は、1/2 である。

(ロ) U0は二項分布B(50 ,1/2)に従うので、p0 = 5025(1/2)25(1 - 1/2)50-25 となる。

(ハ) m = (50 + k)/2 、σ2 = (50 + k)/4 より、 σ = {√(50 + k)}/2

(ニ) Y=(U−(50 + k)/2)/[{√(50 + k)}/2] とすると、Yは近似的に標準正規分布

  N( 0 , 1 )に従うので、

 p = P(25≦U≦25 + k) = P( - k/√(50 + k)≦Y≦k/√(50 + k))

(ホ) α2≧4β2 より、 k2≧ 4(50 + k) すなわち、 k≧ 2 + 2√51 = 16.28

 よって、自然数 k の最小値 k0 は、17 である。  (終)


第4問  花子さんは、毎年の初めに預金口座に一定額の入金をすることにした。この入金
 を始める前における花子さんの預金は 10 万円である。預金には年利 1 % で利息がつくも
 のとする。
  毎年の初めの入金額をp万円とし、n年目の初めの預金をa万円とおく。ただし、p> 0
 とし、nは自然数とする。例えば、a1 = 10 + p 、a2 = 1.01(10 + p) + p である。

(1) aを求めるために二つの方針で考える。

【方針1】 n年目の初めの預金と(n + 1)年目の初めの預金との関係に着目して考える。

(イ) 3年目の初めの預金a3万円を求めよ。

(ロ) すべての自然数nについて、漸化式を作り、それを解け。

【方針2】 もともと預金口座にあった 10 万円と毎年の初めに入金したp万円について、n年
     目の初めにそれぞれがいくらになるかに着目して考える。

 もともと預金口座にあった 10 万円は、2 年目の初めには 10 X1.01万円になり、3 年目の
初めには 10 × 1.012万円になる。同様に考えるとn年目の初めには 10 × 1.01n-1 万円
になる。

(ハ) 1 年目の初めに入金したp万円は、n年目の初めにはいくらになるか。

(ニ) 2 年目の初めに入金したp万円は、n年目の初めにはいくらになるか。

(ホ) n年目の初めに入金したp万円は、n年目の初めにはp万円のままである。
   これより、aを求めよ。

(解)(イ) a3 = 1.01(1.01(10 + p) + p)+ p

(ロ) an+1 = 1.01a + p より、 an+1 + 100p = 1.01(a + 100p)

  よって、 a + 100p = 1.01n-1(a1 + 100p) = 1.01n-1(10 + 101p) より、

  a = 1.01n-1(10 + 101p) - 100p

(ハ) p × 1.01n-1(万円)

(ニ) p × 1.01n-2(万円)

(ホ) a = 10 × 1.01n-1 + p + p × 1.01 + ・・・ + p × 1.01n-1 より、

 a = 10 × 1.01n-1 + 100p × (1.01 - 1)  (終)

(2) 花子さんは、10 年目の終わりの預金が 30 万円以上になるための入金額について考
  えた。

 10 年目の終わりの預金が 30 万円以上であることを不等式で表し、p について解け。

 したがって、毎年の初めの入金額が例えば 18000 円であれば、10 年目の終わりの預金
が30万円以上になることがわかる。

(解) 1.01×a10 ≧ 30 より、 1.0110(10 + 101p) - 101p ≧ 30 なので、

  p ≧ ( 30 - 10×1.0110)/{101(1.0110 - 1)}

 ここで、1.0110 = 1.104622 なので、p ≧ 1.7937 となり、毎年の初めの入金額が

18000 円であれば、10 年目の終わりの預金は 30 万円以上になる。

(3) 1年目の入金を始める前における花子さんの預金が 10 万円ではなく、13 万円の場合
  を考える。すべての自然数nに対して、この場合のn年目の初めの預金はa万円よりも
  いくら多くなるか。なお、年利は 1 %であり、毎年の初めの入金額はp万円のままである。

(解) 3 × 1.01n-1(万円) だけ多い。  (終)


(コメント) 複利計算からの元利均等払いローン返済の計算になることを期待したが、そう
      でもなかった。【方針1】と【方針2】にそれほどの違いはなく、同じ計算をさせてい
      る点が残念です。


第5問  三角錐PABCにおいて、辺BCの中点をMとおく。また、∠PAB = ∠PAC とし、この
 角度をθとおく。ただし、0°<θ< 90°とする。

(1) AMABACで表せ。

(2)(イ) θ = 45°とし、さらに

 |AP|= 3 、|AB|=|PB|= 3 、|AC|=|PC|= 3

が成り立つ場合を考える。このとき APAB = APAC の値を求めよ。

(ロ) さらに、直線AM上の点Dが∠APD = 90°を満たしているとする。
  このとき、AD = kAM となる実数 k を求めよ。

(解)(1) AM = (1/2)AB + (1/2)AC

(2)(イ) APAB = APAC = 3×3×cos45°= 9

(ロ) AD = (k/2)AB + (k/2)AC より、 PD = (k/2)AB + (k/2)AC - AP

 ∠APD = 90°なので、 APPD = 0 より、 9k/2 + 9k/2 - 18 = 0

 よって、 k = 2  (終)

(3) AQ = 2AM で定まる点をQとおく。PAPQが垂直である三角錐PABCはどのような
  ものかについて考えよう。例えば(2)の場合では、点Qは点Dと一致し、PAPQは垂直
  である。

(イ) PAPQが垂直であるとき、AP・PQABACAPを用いて表せ。

(ロ) さらに、APAB/(|AP||AB|) = APAC/(|AP||AC|) = cosθ に注
  意して成り立つ関係式を求めよ。

 したがって、PAPQが垂直であれば、関係式(ロ)が成り立ち、逆に、(ロ)が成り立てば、
PAPQが垂直である。,

(ハ) k を正の実数とし kAPAB = APAC が成り立つとする。このとき成り立つ関係式
  を求めよ。

(二) また、点Bから直線APに下ろした垂線と直線APとの交点をB’とし、同様に点Cから直
  線APに下ろした垂線と直線APとの交点をC’とする。
   このとき、PAPQが垂直であることと同値なことは何か。

(ホ) 特に k = 1 のとき、PAPQが垂直であることと同値なことは何か。

(解)(イ) AQ = AB + AC より、 PQ = AB + AC - AP なので、

  APPQ = APAB + AP・AC - AP・AP = 0 より、APAB + AP・AC = AP・AP

(ロ) |AP||AB|cosθ + |AP||AC|cosθ = |AP2

 すなわち、 |AB|cosθ + |AC|cosθ = |AP| が成り立つ。

(ハ) (ロ)と同様にして、 k|AP||AB|cosθ = |AP||AC|cosθ より、

 k|AB| = |AC| が成り立つ。

(ニ) (ロ)より、 |AB|cosθ + |AC|cosθ = |AP| なので、

 AB’ + AC’= AP が言える。また、△AB’B∽△AC’C で、(ハ)より、 kAB = AC なので、

 kAB’ = AC’ である。よって、 (1 + k)AB’= AP より、B’はAPを 1 : k に内分する。

 同様にして、 (1/k + 1)AC’ = AP より、 AC’ : AP = k : k+1 すなわち、

 AC’: C’P = k : 1 なので、C’はAPを k : 1 に内分する。

(ホ) k = 1 のとき、B’、C’はともにAPの中点で、AP⊥BB’、AP⊥CC’より、

 △BAP、△CAPは、それぞれ BA = BP、CA = CP の二等辺三角形となる。  (終)



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