・ 文系・理系の判別                S.H氏

 日本の高校の進学校と言われるところでは、たいてい2年もしくは3年で文系・理系に分
かれた教育課程を編成している。文系・理系の中間層にも対応するため、文理系などとい
うものを設けているところもある。

 果たして、「文系・理系」というのは、はっきり分けられるのだろうか?これは、常々私が
疑問に思ってきたところである。

 生徒の動向を見ていると、どうも「数学ができるから、理系」「数学ができないから、文系」
「国語ができないから理系」...と、単純に考えているとしか思えない。

 私自身、今から思えば、高校1年のときから、いわゆる「理系」と称される教育課程の洗
礼を受けていた。ただ、当時は、理系だという意識はなく、ただ学校の授業を普通に受け
ているだけで、数学や物理の授業がそれぞれ週8時間あろうが、そんなものだと思ってい
た。実験や野外実習も多く、数学・物理・化学・生物・地学等について、科目横断的な幅広
い学習の機会が与えられていたように思う。

 私の同級生も、大学の工学系のみならず、文学系で教えられている方もいたりで、高校
で理系だからといって、一生そっちの方面とは限らない。高校の文系・理系というのは、単
に、重点をおいて学習する科目の比重の差くらいしかなく、その人の生涯を決定するもの
ではない。

 高校での文系・理系といった曖昧さとは違って、社会でいうところの、「文系・理系」という
のは、その人の一種の特性を表しているように思う。

 最近、「『文系人間・理系人間』を考える医者」という文を、外科医の平岩正樹さんという
方が、講談社 本 (2005年3月号)に投稿されているのを読ませていただいた。

 そこでは、「平岩式文系理系判別法」なるものに目を引かれた。

次は、文系と理系を識別するクイズとのことである。

問題
     次の□に数字をうめよ。

     2  □  6  8  10

 さて、あなたなら、□に何を入れますか?




 平岩さんによれば、□に入れる数字として、「4」と即答する人は、「文系」らしい。ちょっと
回答をためらう人は「やや理系」らしい。

 私なんか、「4」と即答してしまったから、完璧に「文系人間」と判定されてしまった。確かに、
よく考えてみれば、4つの情報があるわけだから、例えば、4次関数

      y=ax4+bx3+cx2+dx+e

において、 x=1 のとき、y=2、 x=3 のとき、y=6、 x=4 のとき、y=8、 x=5 の
とき、y=10 となるように係数の間の関係を求めれば、

  b=−13a 、c=59a 、d=2−107a 、e=60a

となることが、簡単な連立方程式の計算でわかる。そこで、x=2 のとき、y=5 となるよう
に、a の値を定めれば、 a=−1/6 となる。

このとき、4次関数 y=(-1/6)x4+(13/6)x3+(-59/6)x2+(119/6)x−10 は、

      x=1、2、3、4、5 に対して、y=2、5、6、8、10

という性質を持つ。上記の計算から分かるように、x=2 における任意の y の値に対して
a の値が定められ、所要の性質をもつ関数を決定することができる。

 すなわち、□に入る数は、無数にあり一つには決まらないということである。

 平岩さんによれば、与えられた問題を見て「2飛び」という規則を発見し、したがって、□に
4 が入るというのは、その人の持った一つの主観であって、普遍的な考えではないという。
どうも、「主観を普遍的なもの」と考えるタイプの人間が、文系人間と判定されるらしい。私の
性格を分析すれば、これは当たっているので、ちょっと冷や汗ものである。

(補足) 上記の関数の値を、表計算ソフトの Excel にやらせたら、普通の感覚とは異なる
     反応を示して戸惑った。

      計算で、「−24 を求めよ。」という場合、普通の感覚だったら、答えは、「−16 」
     のはずである。ところが、Excel は、「16」と返してくる。試しに、「−25 」を計算さ
     せると、「−32」と返してくることから、どうやら Excel は、「−24 」を、「(−2)4
     と判断して計算しているようだ。
      これは、計算ミスの典型例として有名であるが、その計算ミスを Excel は犯して
     いるらしい。Excel が計算ミスするくらいだから、平然と上記のような計算ミスをす
     る生徒が絶えないのも理由が分かったような気がする。

      Excel において、「−24 を求めよ。」という問題を解かせて、所要の結果を得る
     には、「−(24) 」と、括弧を用いなければならない。

      これは、私にとって、Excel に対する新しい発見である。
      (でも、これって私が知らなかっただけで、本当は常識かも...?)


 GAI さんが、上記の問題を拡張されました。(平成24年4月1日付け)

 上記で、「2,( ),6,8,10,・・・・」の( )に入る数字を考える問題で、

   2,(5),6,8,10,・・・・

が答となる式が考案されていました。そこで、これを拡張して、

  2,(6),6,8,10,・・・・
  2,(7),6,8,10,・・・・
  2,(8),6,8,10,・・・・
  2,(9),6,8,10,・・・・
  2,(10),6,8,10,・・・・

の( )が答となれる式をそれぞれ構成してみてください。

更に、

  1,2,3,4,5,( )
  2,4,6,8,10,( )
  1,4,9,16,25,( )
  1,2,4,8,16,( )
  2,3,5,7,11,( )
  139,21,3,444,65,( )

の( )がすべて19であるようにするには、それぞれどんな式を用意すればいいでしょうか?


 らすかるさんからのコメントです。(平成24年4月1日付け)

 一般に、先頭5項が、a、b、c、d、e となる式は、ラグランジェの補間式により、

 a{(x-2)(x-3)(x-4)(x-5)}/{(1-2)(1-3)(1-4)(1-5)}
  +b{(x-1)(x-3)(x-4)(x-5)}/{(2-1)(2-3)(2-4)(2-5)}
   +c{(x-1)(x-2)(x-4)(x-5)}/{(3-1)(3-2)(3-4)(3-5)}
    +d{(x-1)(x-2)(x-3)(x-5)}/{(4-1)(4-2)(4-3)(4-5)}
     +e{(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)}/{(5-1)(5-2)(5-3)(5-4)}

のようにすれば作れますので、「2,9,6,8,10,・・・・」ならば、

 2{(x-2)(x-3)(x-4)(x-5)}/{(1-2)(1-3)(1-4)(1-5)}
  +9{(x-1)(x-3)(x-4)(x-5)}/{(2-1)(2-3)(2-4)(2-5)}
   +6{(x-1)(x-2)(x-4)(x-5)}/{(3-1)(3-2)(3-4)(3-5)}
    +8{(x-1)(x-2)(x-3)(x-5)}/{(4-1)(4-2)(4-3)(4-5)}
     +10{(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)}/{(5-1)(5-2)(5-3)(5-4)}
=(-5x4+65x3-295x2+547x-300)/6

 「139,21,3,444,65,19,・・・・」も同様に、

 139{(x-2)(x-3)(x-4)(x-5)(x-6)}/{(1-2)(1-3)(1-4)(1-5)(1-6)}
  +21{(x-1)(x-3)(x-4)(x-5)(x-6)}/{(2-1)(2-3)(2-4)(2-5)(2-6)}
   +3{(x-1)(x-2)(x-4)(x-5)(x-6)}/{(3-1)(3-2)(3-4)(3-5)(3-6)}
    +444{(x-1)(x-2)(x-3)(x-5)(x-6)}/{(4-1)(4-2)(4-3)(4-5)(4-6)}
     +65{(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)(x-6)}/{(5-1)(5-2)(5-3)(5-4)(5-6)}
      +19{(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)(x-5)}/{(6-1)(6-2)(6-3)(6-4)(6-5)}

=(407x5-6924x4+43503x3-123948x2+157150x-68520)/12

のように作れます。


 空舟さんからのコメントです。(平成24年4月2日付け)

 らすかるさんの多項式の補間の考えは有効な手段ですが、階差数列という考え方で多項
式を求めることもできます。

 数列 {an} に対して、 bn=an+1-an とすると、{bn}の一般項が分かれば、an は求められる。

 元の数列が有限項なら、階差数列を次々とれば、そのうち項数が2項とか1項になるので、
nの式で自明に表せる。それから、上記の通り、復元していけば良い...という考え方です。

 このような、いくつかの項があって多項式を求める問題は、たしか、いつかの数検1級の問
題で出題されていたと思います。

 数検の問題の関連で、「232323 の1の位を求めよ」という問題を思い出しました。一般に、

・kxをNで割った余りは、k=0、1、2、...で、やがてループする。その周期は、Nの約数。
 (以下の対比用)

・xk をNで割った余りは、k=0、1、2、...で、やがてループする。その周期は、φ(N)の約数

・x をNで割った余りは、k=0、1、2、...とすると、やがてループする。その周期は、φ(φ(N))
 の約数

となりますが、ここで具体的なループが分かると、Nの素因数分解の手がかりを得られること
があります。

 例えば、2 を 589 で割った余りを調べると、k=90 の時に1になることから、

 (245≡94)2≡1(mod 589)、すなわち、93×95=589n から、589の素因数分解の手がかりを
得ます。

 また同様に、22k を 589 で割った余りを調べると、以下の通り周期が12です。

  2、4、16、256、157、500、264、194、529、66、233、101、188、4、...

ここから、22≡1882 で、やはり上と同じく 1≡942 (mod 589) が得られます。

 但し、大きなNについては、φ(φ(N))も大きいので実用的な方法ではないでしょうが...。



                                             投稿一覧に戻る