以下の4つのくじ A、B、C、D があります。Allais のパラドックスについて、後の記述から正
しいものを選んでください。
くじA:「確実に 1000 ドルあたる」
くじB:「確率 0.89 で 1000 ドル、確率 0.10 で 5000 ドル、確率 0.01 で 0 ドルあたる」
くじC:「確率 0.11 で 1000 ドル、確率 0.89 で 0 ドルあたる」
くじD:「確率 0.10 で 5000 ドル、確率 0.90 で 0 ドルあたる」
@ AとBの比較では、Aを好む人が多く、CとDの比較では、Dを好む人が多い。これは独立
性の公理を満たしていない。
A AとBの比較では、Bを好む人が多く、CとDの比較では、Dを好む人が多い。これは規範
的合理性を満たしている。
B AとBの比較なら、Bを好む人が多く、CとDの比較なら、Cを好む人が多い。これは推移
律を満たしていない。
C AとBの比較なら、Aを好む人が多く、CとDの比較なら、Cを好む人が多い。これは弱順
序性を満たしていない。
4つの選択肢の中から正解を選ぶ問題です。私は、Aを選びましたが、自信がありません。
もし、わかる方がいらっしゃれば、お願いします。
(コメント) くじA、B、C、Dの期待値を計算してみました。
くじA:E=1000
くじB:E=0.89×1000+0.10×5000+0.01×0=890+500=1390
くじC:E=0.11×1000+0.89×0=110
くじD:E=0.10×5000+0.90×0=500
期待値だけで判断すると、AとBならば、Bを、CとDならば、Dを選ぶのかな?
ただ、Bの方は、全く貰えない可能性を含んでおり、確実に貰えるAを選択するのも心情的
に理解できる。
CとDでは、貰える金額に差があり、その確率もほとんど同じなので、期待値がより大きい
Dを選択することも心情的に理解できる。
DD++さんからのコメントです。(令和3年10月7日付け)
アレーの実験の結果は、A と D が選ばれることを示している時点で、選択肢@以外は誤
りです。
あとは、@が正しいかどうかですが、
「確率 0.11 で 1000 ドル、確率 0.89 で x ドルあたる」
「確率 0.10 で 5000 ドル、確率 0.01 で 0 ドル、確率 0.89 で x ドルあたる」
これらの選択は、独立性公理が正しければ、x の値に影響されないはずですが、この実験
は、実際にはそうならないことを示しています。
(コメント) 「アレーのパラドックス」というのは、私にとって初見でした。モーリス・アレー(仏)
が見つけたパラドックスとのことで、少し整理してみました。
田中さんの示された数値を用いて、アレーは会議の参加者に、こんな質問をしたそうです。
(質問1)
くじA:「確実に 1000 ドルあたる」
くじB:「確率 0.89 で 1000 ドル、確率 0.10 で 5000 ドル、確率 0.01 で 0 ドルあたる」
あなたは、どちらのくじを引きますか?
この(質問1)に、多くの人は、くじAを選ぶと答えたそうです。
(質問2)
くじC:「確率 0.11 で 1000 ドル、確率 0.89 で 0 ドルあたる」
くじD:「確率 0.10 で 5000 ドル、確率 0.90 で 0 ドルあたる」
あなたは、どちらのくじを引きますか?
この(質問2)に、多くの人は、くじDを選ぶと答えたそうです。
人間の心情として、これらの選択には理解できるものがあり、パラドックスという感じはしな
い。どこがパラドックスなのだろうか?
経済学における「期待効用」という考え方に合致しない選択をしているところにパラドックス
があるようです。
上記の4つのくじには、賞金額として、0、1000、5000 の3種類が登場します。その貰え
る賞金額の嬉しさを、効用(0)、効用(1000)、効用(5000)と客観的に表すことにします。
期待効用は次のように計算されます。
くじAの期待効用:効用(1000)×100%
くじBの期待効用:効用(0)×1%+効用(1000)×89%+効用(5000)×10%
このくじAとくじBを比較して、くじAを選んだということは、不等式
効用(1000)×100%>効用(0)×1%+効用(1000)×89%+効用(5000)×10%
が成り立つことを意味します。
くじCの期待効用:効用(0)×89%+効用(1000)×11%
くじDの期待効用:効用(0)×90%+効用(5000)×10%
このくじCとくじDを比較して、くじDを選んだということは、不等式
効用(0)×90%+効用(5000)×10%>効用(0)×89%+効用(1000)×11%・・・(*)
が成り立つことを意味します。
ここで、
効用(1000)×100%>効用(0)×1%+効用(1000)×89%+効用(5000)×10%
から、「効用(1000)×89%」を左辺に移項して、
効用(1000)×11%>効用(0)×1%+効用(5000)×10%
となり、この両辺に、効用(0)×89% を加えると、
効用(0)×89%+効用(1000)×11%>効用(0)×90%+効用(5000)×10%
が得られます。何と、上記の不等式(*)と矛盾する不等式になっています。
人間の心情として理解できる選択だったのに、期待効用の考え方では、何故か、両者には
矛盾が生じてしまっている。これがパラドックスと呼ばれる所以である。人間の心情による決
定方法には、期待効用では説明できない何かがあるということを示しているのだそうです。
以下、工事中!