白色、黒色の碁石を使った次のようなゲームを考えます。父、子が自分の色の石を決め、
何枚かずつ壺の中に入れます。(ここでは父が白、子が黒とします。)
そして、母に、目をつむって壺の中から石を1枚取り出してもらいます。次に、もう1枚取り
出してもらい、それが最初の石と同じ色ならば、さらにもう1枚取り出してもらいます。
こうして違う色の石が出てくるまで続け、違う色の石が出てきたら、この違う色の石を壺に
戻して1ラウンド終了です。
このラウンドを何度も繰り返して、壷から最後の石が出てきたときに、それが白ならば父の
勝ち、黒ならば子の勝ちとします。
最初に、父が16枚の白い石、子が9枚の黒い石を壺に入れたときに、父と子、それぞれの
勝率はどうなるでしょうか?
知っている人が少なくないと思いますが、実は碁石では白色の石と黒色の石とで大きさが
異なります。また、製品によっては材質に違いがあり、手触りに違いがあるかもしれません。
母はそうしたことに影響されずに無作為に壺の中から石を取り出すものとします。
インターネット上のとある資料によれば、上記設定のゲームで、父と子とで勝率に差が出な
いそうです。
ちょっと信じがたいので…教えてください。
りらひいさんからのコメントです。(令和3年8月1日付け)
白い石 a枚、黒い石 b枚 から始めるときの白側の勝率を P(a,b) とする。このとき、黒側の
勝率は 1-P(a,b) となる。
P(a,b)=1/2 となることを数学的帰納法により証明する。
[1] a=b=1 のとき、
@1回目に白が出たら白の負けである。
A1回目に黒が出たら白の勝ちである。
よって、白が勝つ確率は、 P(1,1) = 1/2
[2] (a≦m かつ b≦n-1) または (a≦m-1 かつ b≦n) のときに、P(a,b)=1/2 と仮定する。
a=m、b=n のときの確率 P(m,n) を考える。
@1回目からm回目まで白が出たら、白の負けである。
A1回目からn回目まで黒が出たら、白の勝ちである。
Bm≧2、1≦k≦m-1 として、1回目からk回目まで白が出て k+1回目に黒が出たら、
白m-k枚・黒n枚で次のラウンドを行う。
Cn≧2、1≦k≦n-1 として、1回目からk回目まで黒が出て k+1回目に白が出たら、
白m枚・黒n-k枚で次のラウンドを行う。
このとき、
@の確率は、石を一列に並べたときに白がm個のあとに黒がn個並ぶ確率に等しい。
Aの確率は、石を一列に並べたときに黒がn個のあとに白がm個並ぶ確率に等しい。
よって、@の確率とAの確率は等しくなり、これをf(m,n)とおく。
BCの場合、次以降のラウンドにおける白の勝率は、仮定より常に1/2である。
これより、 P(m,n) = f(m,n) + {1-f(m,n)-f(m,n)}*(1/2) = 1/2
[1][2]から数学的帰納法により、P(a,b)=1/2 が示された。
(コメント) りらひいさん、鮮やかですね!
Dengan kesaktian Indukmuさんからのコメントです。(令和3年8月2日付け)
りらひいさん、ご教示をまことに有り難うございました。
[2]で、@、Aを、B、Cから分離してしまうことと、P(1,1) = 1/2 であることとが相性が良い
のですね。美しいと思います。
ところで、
最後のラウンドの開始時点で、
ケース白:白い石 m枚、黒い石 0枚 (白の勝ち)
または、
ケース黒:白い石 0枚、黒い石 n枚 (黒の勝ち)
のどちらかが起きるものと考えられます。ただし、mもnも正の整数です。
最後のラウンドのひとつ前のラウンドの開始時点では、一般性を失うことなく
白い石 m枚、黒い石 n枚
となっていたものと考えられます。
りらひいさんによって定義された f を使うと次のように言えます。
最後のラウンドのひとつ前のラウンドの開始時点から、f(m,n) の確率で「ケース白」が起
こり、f(m,n) の確率で「ケース黒」が起こります。
すなわち、f(m,n) = 1/2
です。
任意の「最後のラウンドのひとつ前のラウンドの開始時点」で白が勝つ確率は 1/2 で黒が
勝つ確率も 1/2 となっているのですね……
【フィフティフィフティになるなんて信じられない】という、私の直観は大間違いでした、あまり
にも筋悪です……。