・ 郵便貯金                     S.H氏

 平成17年4月から、郵便貯金の利子の計算方法が変わる。一般庶民にとっていい方向
に変わってくれれば申し分ないが、これは、正に、改悪である。一般庶民の密かな楽しみ、
最後の砦を奪うものである。

 定額貯金は、6ヶ月以降自由満期で、しかも半年ごとの複利計算で利子が計算され、最
長10年間預入可能という民間銀行がまねをしたくても到底できない、一般庶民にとって最
も身近な貯蓄商品である。

 1000円以上1000円単位で預入可能で、1口の預入金額が、

    1000円、5000円、1万円、5万円、10万円、50万円、100万円、300万円

の8種類用意されている。○○○円×○口の形で預け入れることを、合併預入という。

 その利子の計算方法が次のように変わる。

平成17年3月まで(現行): 
   利子が1円以上のときは、1円未満の端数は切り捨て。
  ただし、利子の金額が1銭以上1円未満のときは、1円に切り上げる。

            ↓↓↓

平成17年4月以降:
   利子が1円以上のときは、1円未満の端数は切り捨て。
  ただし、合併預入の郵便貯金の払い戻しのときは、口数倍後の利子の1円未満
  の端数は切り捨て。



 この利子の計算方法の変更によって、どのようなことが実際に起こるのか、具体例で確
認してみよう。

 平成16年12月12日現在、1年以上6ヶ月未満の預入利率は、0.03%である。

いま、現行で、1000円を1年間預けるとする。

「定額郵便貯金規定」によると、

  ○ 利子は月割りで計算する。円未満は切り捨て。
    ただし、1銭以上1円未満のときは、1円に切り上げ。


  ○ 預入の月から6か月ごとを利子計算基準月とし、その6か月間の利子を前記の方
    法で計算して元金にこの利子を組み入れ、それを次の利子計算の元金とする。
    ただし、利子に1銭未満の端数があるときはその端数を切り捨てる。


とあるので、高校で習うような単純な複利計算 :

     1000×(1+0.0003×(6/12))2=1000.3000225 (円)

では、正しく元利合計を計算することは出来ない。
ハンドルネーム : koido さんよりアドバイスをいただきました。謝謝!

 まず、預けて半年後の元利合計の計算:
        1000×(1+0.0003×(6/12))=1000.15 (円)
 郵便貯金の規約により、1銭未満の端数はないので、元利合計は、1000.15円となり、
これが次の利子計算の元金となる。
この場合、途中段階なので、「ただし、1銭以上1円未満のときは、1円に切り上げ。」の原則は適用されない。
 この1000.15円を、さらに半年間預けたときの元利合計の計算:
        1000.15×(1+0.0003×(6/12))=1000.3000225 (円)
 ここで、郵便貯金の規約により、「1銭未満の端数は切り捨て」られ、利子は、30銭となる
が、さらに、「1銭以上1円未満のときは、1円に切り上げ」の原則により、利子は1円となる。
 よって、1000円を1年間預けると、元利合計は、1001円となる。

 これに対して、平成17年4月以降は、上記の規則が適用されて、

 まず、預けて半年後の元利合計の計算:
        1000×(1+0.0003×(6/12))=1000.15 (円)
 郵便貯金の規約により、1円未満は切り捨てられて、元利合計は、1000円のまま。
 この1000円を、さらに半年間預けても同様な計算で、元利合計 1000円は変わらな
 い。つまり、1年預けても利子はつかず、1000円のままである。
(貯金していても、利子が全く付かないというのは、一般庶民にとっては大事件である!)

 上記の計算では、両者の差は少ないように感じるかもしれないが、例えば、10万円を
合併預入(1000円×100口)した場合、その差は歴然となる。

 現行では、受け取り金額が、 1001×100=100100 (円)で、100円の利子が付
くのだが、平成17年4月以降では、まず、預けて半年後の元利合計は
      1000.15×100=100015 (円)
で、さらに、半年後の元利合計は
      1000.15×(1+0.0003×(6/12))×100=100030.00225 (円)
より、1円未満は切り捨てられて、100030円で、30円しか利子は付かない。

利子の70円を得るためには相当な貯金が必要なわけで、これは本当に困った改悪といわ
なければならない。

 上記では、1年間預け入れた場合について計算したが、1ヶ月定期という商品について計
算すると、次のような驚くべき事実が明らかとなる。

 10万円を、1000円を単位として100口のニュー定期に1ヶ月間預け入れした場合、そ
の利率は、0.02%である。

 現行では、  1000×0.0002×(30/365)=0.01643835616 (円) より、端
数切り上げで、1円の利子が付くので、100口では、1×100=100 (円)の利子となり、
毎月預けることを繰り返すことにより、10万円で付く利子は、100×12=1200 (円)と
なる。
 
(コメント) 1年を365日、1月を30日として利子の計算がなされるが、1月(31日間)預
      けた場合も30日で計算され、1日分損したような気分...。
      (→定期郵便貯金規定によれば、利子は、1年を365日とし、日割で計算する
        ことになっている。)

 それに対して、平成17年4月以降は、1ヶ月の利子が、0.016・・・×100=1.6・・・
から、1円で、毎月預けることを繰り返しても、1年間の利子は、12円にしかならない。

     1200円  と  12円   ・・・・・ なんという差だろう!

 いまどき、このような高額な利子がつく貯蓄商品は珍しい。貯蓄の裏技として、よく金融関
係の書籍に紹介されている方法である。ただ、この裏技を郵便局で実行する場合、郵便局
の方々はあまりいい顔をしない。そのことを念頭に置いて出向く勇気が必要だろう。

 ところで、上記の裏技は、現在、定期貯金については禁じ手になっている。

 (参考) 平成11年1月以降に預入れられた定期貯金については、口数での預入れが
      廃止されており、平成10年12月までに預入れされた自動継続扱いのものを除
      き、上記のような預入れはできないことになっている。

 上記の計算からも分かるように、1000円単位で預ける定額貯金だと端数がどんどん切
り捨てられ、本来受け取るべきものを失うことになりかねない。その対策としては、口数を
大きいものにまとめるしかないのだろう。(この方法は、郵便局も推奨している。)

 以前、札幌に住んでいる頃、自宅近くの郵便局で定額貯金を預けたことがある。自宅に
帰ると、郵便局長さんから直々に電話があり、小口に分けたものを1口にまとめてほしいと
いう。そのときは、何も考えずにOKとしてしまった。もっとも、その当時の金利は、10年間
預けると、2倍以上に貯金が増えるという超高金利時代で、1円未満端数切り上げの原則
は適用されないので、実害はなかったと思うが...。


(追記) 上記では、定期預金を例に裏技を紹介したが、もちろん、定額貯金にも裏技は存
     在する。それが、上で書いた札幌の郵便局長さんの心配だったのだろう。

      ただし、この裏技も、平成17年4月からの規定改正で使えないことになるという
     ことを、Koido さんからメールをいただいた。

      今回の改定により、6ヶ月預けても利子が 1円にならない場合は 4月以降解約
     をする分については切り捨てとなるので、これからの駆け込みの預け入れは意味
     がないようだ。

      下記の裏技を知らなかった方は、「こんな手があったんだ〜!」位にとどめて下
     さい。

 定額貯金の裏技

  これは、6ヶ月ごとに1口1000円で合併預入することにより、年0.2%利子が稼げる
 というものである。

 平成16年12月12日現在、1年以上6ヶ月未満の預入利率は、0.03%である。

いま、現行で、10万円(1口1000円×100口)を 6ヶ月預けるとする。

このとき、1口あたりの6ヶ月後の元利合計の計算は、
        1000×(1+0.0003×(6/12))=1000.15 (円)
であるが、「定額郵便貯金規定」が適用されて、実際に受け取る元利合計は、1001円と
なる。これを新しい元金として再度6ヶ月預けるわけである。

このとき、1口あたりの6ヶ月後の元利合計の計算は、
        1001×(1+0.0003×(6/12))=1001.15015 (円)
であるが、「定額郵便貯金規定」が適用されて、実際に受け取る元利合計は、1002円と
なる。したがって、10万円を、1口1000円で合併預入し、6ヶ月ごとに預け替えを行うと、
利子は、200円となり、年利率 0.2%に相当する。

 預け替えをしないで、1年間ほったらかしの場合は、利子は100円だったわけで、この
低金利の時代に2倍の格差があるというのは郵便局にとって驚異だったのだろう。それ
が、今回の改悪につながったのだろうと思う。

 これは郵便局も指摘しているが、口数を大きいものにまとめないと大変なことになると
いうことを Koido さんは強調されている。

 4口以上(預入期間によって異なるが、例えば、6ヶ月の場合)を 1枚の証書(通帳式の
場合は 1つの証書番号)にまとめるか、1口の金額を大きくするか、どちらかにしないと利
子がつかない可能性があるそうだ。

 定額貯金を 1枚の証書に 1000円だけ預けた場合、利子がつかない期間は最大2年
であるので、2年以上預ければ定額貯金では必ず1円以上利子がつく。ただし、それ以下
だと、金額によっては利子がつかない場合が 4月から生じるようだ。

 今回の改悪の「口数倍後の利子の1円未満の端数は切り捨て。」は、計り知れない不
利益を一般庶民に押しつける条文となりそうである。



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