観察だけでは判断が難しい例題として、次のものを挑戦していました。
単位円 x^2+y^2=1 がカテナリー曲線 y=a*(cosh(x/a)-2)??(0≦a≦1) を切り取る線分の弧
長の最大値L(a)を求めたい。(その時のaの値も)
一応自分なりの結果は出したのですが、はてこれが妥当か知りたく貴殿の方法と結果を
教えてほしい。
らすかるさんからのコメントです。(令和3年3月15日付け)
a=0.5447778738152936529929258939 のとき
L(a)=2.79878837864608196338620377546ぐらい?
GAIさんからのコメントです。(令和3年3月15日付け)
ここまで詳しくは求めませんでしたが、安心しました。ちなみにaの方の値は何か計算式等
で求められますか?
らすかるさんからのコメントです。(令和3年3月15日付け)
上記の値は試行錯誤で探したのですが、計算式が作れないかとあれこれやったら何とか
作れました。
(x^2)cosh(x)-xsinh(x)-(cosh(x)-2)(2cosh(x)-1)=0
の解を求めて(x=1.67246329…)、a=1/√{x^2+(cosh(x)-2)^2}
L(a)=2asinh(x)とすればaとL(a)の値が出せます。
GAIさんからのコメントです。(令和3年3月15日付け)
確かに上記の関係式をもっていれば、一発で最大値が求まることになりますね。一発で最
大値を見つけられる手段が分からなかったので、試行錯誤を繰り返しながら最大部分を絞っ
ていくことで操作していました。
通常の過程では、
A(a)=solve(x=0,1,x^2+a^2*(cosh(x/a)-2)^2-1)
で単位円とカテナリー曲線との第一象限での交点のx座標を求める。
求める弧長は、
L(a)=2*∫[0,A(a)]sqrt(1+(y')^2)dx
=2*∫[0,A(a)]sqrt(1+sinh(x/a)^2)dx
=2*∫[0,A(a)]sqrt(cosh(x/a)^2)dx
=2*∫[0,A(a)]cosh(x/a)dx
=2*a*[sinh(x/a)] 0A(a)
=2*a*sinh(A(a)/a)
従って、X=A(a)/aの値を求める操作が、X^2+(cosh(X)-2)^2=(1/a)^2 を満たすXを求める
ことに通じる。
らすかるさんが導いている関係式は、この辺の数値を見つけるためのものであろうとみて
いるのですが、これが次の不思議な2次方程式もどき
(係数に相当する部分にもxを含む関係式)
(x^2)cosh(x)-xsinh(x)-(cosh(x)-2)(2cosh(x)-1)=0
はどこから発生してくるのか?ここがどうしても自分には見えてきません。
らすかるさんからのコメントです。(令和3年3月16日付け)
まず、円が固定されてカテナリー曲線を変化させているのを逆にして、カテナリー曲線を固
定して円の方を変えるようにしました。
カテナリー曲線の式をよく見ると相似拡大縮小して移動しているだけなので、カテナリー曲
線をy=cosh(x)-2に固定して円の方を変えるようにすると、円はx^2+y^2=1/a^2となります。
aが小さくなっていくと円は大きくなっていき、カテナリー曲線の含む範囲が広がりますが、
求めたいものは「円の大きさに対するカテナリー曲線の長さの最大」ですから、
円の半径(=1/a)を変えたときの円に含む曲線の長さの変化(倍率)と円の半径の変化(倍率)
を式に表します。
半径がΔr増えたとき、もしカテナリー曲線が円に直交していれば曲線の長さも(片側で)Δr
増えますが、直交していませんので角度を求めて三角関数で計算すれば、Δrの何倍増える
かわかります。
円とカテナリー曲線がx=tで交わっているとき、交点は(t,cosh(t)-2)なので交点の円周上の
偏角は、arctan((cosh(t)-2)/t) で、カテナリー曲線の傾き角度は、arctan(sinh(t)) なので、
交点と原点を結ぶ直線に対するカテナリー曲線の角度は、
arctan(sinh(t))-arctan((cosh(t)-2)/t)
よって、Δrに掛ける係数は、
tan{arctan(sinh(t))-arctan((cosh(t)-2)/t)}
={sinh(t)-(cosh(t)-2)/t}/{1+(cosh(t)-2)sinh(t)/t}
={tsinh(t)-cosh(t)+2}/{t+(cosh(t)-2)sinh(t)}
から、
√{1+{{tsinh(t)-cosh(t)+2}/{t+(cosh(t)-2)sinh(t)}}^2}
なので、長くなる分は、
Δr√{1+{{tsinh(t)-cosh(t)+2}/{t+(cosh(t)-2)sinh(t)}}^2}
で、全体の長さの増加比率では、
1+Δr√{1+{{tsinh(t)-cosh(t)+2}/{t+(cosh(t)-2)sinh(t)}}^2}/sinh(t)倍
一方、半径がΔr増えると、増える比率は、
1+Δr/r=1+Δr/√{t^2+(cosht-2)^2}
であり、最大値をとるとき、この比率が等しくなるので、
1+Δr√{1+{{tsinh(t)-cosh(t)+2}/{t+(cosh(t)-2)sinh(t)}}^2}/sinh(t)
=1+Δr/√{t^2+(cosht-2)^2}
つまり、
√{1+{{tsinh(t)-cosh(t)+2}/{t+(cosh(t)-2)sinh(t)}}^2}/sinh(t)
=1/√{t^2+(cosht-2)^2}
となります。そしてこの式を両辺2乗して一生懸命整理すると、
(t^2)cosh(t)-tsinh(t)-(cosh(t)-2)(2cosh(t)-1)=0
という式が得られます。
よって、
(x^2)cosh(x)-xsinh(x)-(cosh(x)-2)(2cosh(x)-1)=0
を解くと、元の条件で最大値を得られるx座標を y=cosh(x)-2 と x^2+y^2=1/a^2 の交点
に変えたものが得られますので、この結果から、a=1/√{x^2+(cosh(x)-2)^2} によりaを計算
すれば、求めたい値になります。
GAIさんからのコメントです。(令和3年3月16日付け)
精緻な工芸品を見る思いです。カテナリー曲線を固定して円を変化させるなんてコペルニ
クス的発想です。いい仕事してますね!
ただし何気なく書かれてある下記をやってみようと試みたのですが、その手間や遥かに想
像を超える作業で、ソフトの力も借りながら進めましたがどうしても最後のスッキリした式に
は辿り着きませんでした。
タイプの都合上、sinh(t)=S、cosh(t)=Cで最初の式は両辺2乗して分母を払い左辺から右辺
を引いた式です。
C^2-S^2=1 の等式は成立
gp > (t^2+(C-2)^2)*(t+(C-2)*S)^2+(t^2+(C-2)^2)*(t*S-C+2)^2-S^2*(t+(C-2)*S)^2
%215 = (S^2 + 1)*t^4 +((2*S^2 + 2)*C^2 + (-8*S^2 - 8)*C + (7*S^2 + 8))*t^2
+
(-2*S^3*C + 4*S^3)*t +((S^2 + 1)*C^4 + (-8*S^2 - 8)*C^3 + (-S^4 + 24*S^2
+ 24)*C^2
+ (4*S^4 - 32*S^2 - 32)*C + (-4*S^4 + 16*S^2 + 16))
そこで、t^4の係数:S^2 + 1=C^2
t^2の係数:(2*S^2 + 2)*C^2 + (-8*S^2 - 8)*C + (7*S^2 + 8)
=2*(S^2+1)*C^2-8*(S^2+1)*C+7*(C^2-1)+8
=2*C^4-8*C^3+7*C^2+1
tの係数:(-2*S^3*C + 4*S^3)=2*S^3*(-C+2)=2*S*(C^2-1)*(-C+2)=2*S*(-C^3+2*C^2+C-2)
tを含まない部分:
((S^2 + 1)*C^4 + (-8*S^2 - 8)*C^3 + (-S^4 + 24*S^2 + 24)*C^2 + (4*S^4 - 32*S^2 - 32)*C
+ (-4*S^4 + 16*S^2 + 16))
=C^6-8*C^5+(24*C^2-S^4)*C^2+(4*S^4-32*C^2)*C+16*C^2-4*S^4
ここに、S^4=(C^2-1)^2から、
24*C^2-S^4=24*C^2-(C^2-1)^2=24*C^2-C^4+2*C^2-1=-C^4+26*C^2-1
4*S^4-32*C^2=4*(C^2-1)^2-32*C^2=4*C^4-40*C^2+4
16*C^2-4*S^4=16*C^2-4*(C^2-1)^2=-4*C^4+24*C^2-4
から上式は、
=C^6-8*C^5+(-C^4+26*C^2-1)*C^2+(4*C^4-40*C^2+4)*C+(-4*C^4+24*C^2-4)
=C^6-8*C^5-C^6+26*C^4-C^2+4*C^5-40*C^3+4*C-4*C^4+24*C^2-4
=-4*C^5+22*C^4-40*C^3+23*C^2+4*C-4
従って、
%215=C^2*t^4+(2*C^4-8*C^3+7*C^2+1)*t^2+2*S*(-C^3+2*C^2+C-2)*t
+(-4*C^5+22*C^4-40*C^3+23*C^2+4*C-4)
なる式にしか変更できませんでした。これを因数分解しようにもなんの反応もありませんでし
た。
らすかるさんからのコメントです。(令和3年3月16日付け)
全部展開しちゃったらつらいと思います。
(t^2+(C-2)^2)*(t+(C-2)*S)^2+(t^2+(C-2)^2)*(t*S-C+2)^2=S^2*(t+(C-2)*S)^2
(t^2+(C-2)^2)*{(t+(C-2)*S)^2+(t*S-C+2)^2}=S^2*(t+(C-2)*S)^2
{ }内は、
(t+(C-2)*S)^2+(t*S-C+2)^2
=t^2+2tS(C-2)+{(C-2)S}^2+(tS)^2-2tS(C-2)+(C-2)^2
=t^2+{(C-2)S}^2+(tS)^2+(C-2)^2
={t^2+(C-2)^2}*(1+S^2)
={t^2+(C-2)^2}*C^2
なので、
(t^2+(C-2)^2)*{(t+(C-2)*S)^2+(t*S-C+2)^2}=S^2*(t+(C-2)*S)^2
(t^2+(C-2)^2)*{t^2+(C-2)^2}*C^2=S^2*(t+(C-2)*S)^2
C^2*(t^2+(C-2)^2)^2=S^2*(t+(C-2)*S)^2
C*(t^2+(C-2)^2)=S*(t+(C-2)*S) (∵両辺とも正)
Ct^2-St+C(C-2)^2-S^2(C-2)=0
Ct^2-St+(C-2){C(C-2)-S^2}=0
Ct^2-St+(C-2){C^2-2C-C^2+1}=0
Ct^2-St-(C-2)(2C-1)=0
のようになります。
GAIさんからのコメントです。(令和3年3月16日付け)
なるほど!芸術的だ。将来絶対きれいに整理できるはずだという確信がないと、こんな最
短で辿り着ける展開は思いつけないし、すぐに道に迷ってしまう。
世の中、A(x)*x^2+B(x)*x+C(x)=0 みたいな方程式もありなんですね。意外と役に立つもの
が存在してるかも・・・。度重なる質問に、丁寧な解説ありがとうございました。
らすかるさんからのコメントです。(令和3年3月16日付け)
C^2*(t^2+(C-2)^2)^2=S^2*(t+(C-2)*S)^2
この式の右辺を左辺に移行したものを展開して、
%215=C^2*t^4+(2*C^4-8*C^3+7*C^2+1)*t^2+2*S*(-C^3+2*C^2+C-2)*t
+(-4*C^5+22*C^4-40*C^3+23*C^2+4*C-4)
この式と見比べると、t^2の係数の「7*C^2+1」の箇所だけ異なります。
7*C^2+1を8*C^2-S^2に変えると因数分解できて(私の書いた式)×(正になる式)が得られ
ますね。
# 当初、式に間違いがあると思って書いて、後から消したのですが、間違いがあると思った
のは私の間違いでした。
GAIさんからのコメントです。(令和3年3月16日付け)
7*C^2+1=7*C^2+C^2-S^2=8*C^2-S^2 とするだけで、
gp > factor(C^2*t^4+(2*C^4-8*C^3+8*C^2-S^2)*t^2+2*S*(-C^3+2*C^2+C-2)*t
+(-4*C^5+22*C^4-40*C^3+23*C^2+4*C-4))
%324 =[C*t^2 - S*t + (-2*C^2 + 5*C - 2) 1][C*t^2 + S*t + (2*C^3 - 6*C^2
+ 3*C + 2) 1]
と見事に因数分解してくれた。
そう言えば係数の7だけが違和感がありますね。定数項の23も気になりますが、これは平
気なんだ。