(x-1)^n の展開式はよく知られていて、
1: x - 1
2: x^2 - 2*x + 1
3: x^3 - 3*x^2 + 3*x - 1
4: x^4 - 4*x^3 + 6*x^2 - 4*x + 1
5: x^5 - 5*x^4 + 10*x^3 - 10*x^2 + 5*x - 1
6: x^6 - 6*x^5 + 15*x^4 - 20*x^3 + 15*x^2 - 6*x + 1
7: x^7 - 7*x^6 + 21*x^5 - 35*x^4 + 35*x^3 - 21*x^2 + 7*x - 1
8: x^8 - 8*x^7 + 28*x^6 - 56*x^5 + 70*x^4 - 56*x^3 + 28*x^2 - 8*x + 1
9: x^9 - 9*x^8 + 36*x^7 - 84*x^6 + 126*x^5 - 126*x^4 + 84*x^3 - 36*x^2
+ 9*x - 1
10: x^10 - 10*x^9 + 45*x^8 - 120*x^7 + 210*x^6 - 252*x^5 + 210*x^4 - 120*x^3
+ 45*x^2 - 10*x + 1
なる展開式が発生し、その係数は二項係数が深く関係している。
ところが、この展開式での符号を若干変更してみて、
1: x - 1
2: x^2 - 2*x - 1
3: x^3 - 3*x^2 - 3*x + 1
4: x^4 - 4*x^3 - 6*x^2 + 4*x + 1
5: x^5 - 5*x^4 - 10*x^3 + 10*x^2 + 5*x - 1
6: x^6 - 6*x^5 - 15*x^4 + 20*x^3 + 15*x^2 - 6*x - 1
7: x^7 - 7*x^6 - 21*x^5 + 35*x^4 + 35*x^3 - 21*x^2 - 7*x + 1
8: x^8 - 8*x^7 - 28*x^6 + 56*x^5 + 70*x^4 - 56*x^3 - 28*x^2 + 8*x + 1
9: x^9 - 9*x^8 - 36*x^7 + 84*x^6 + 126*x^5 - 126*x^4 - 84*x^3 + 36*x^2 + 9*x - 1
10: x^10 - 10*x^9 - 45*x^8 + 120*x^7 + 210*x^6 - 252*x^5 - 210*x^4 + 120*x^3 + 45*x^2 - 10*x - 1
なる方程式にしてみると、この方程式が持つ解が
1: tan(π/4)
2: tan(3*π/8)、-tan(π/8)
3: tan(5*π/12)、-tan(3*π/12)、tan(π/12)
4: tan(7*π/16)、-tan(5*π/16)、tan(3*π/16)、-tan(π/16)
5: tan(9*π/20)、-tan(7*π/20)、tan(5*π/20)、-tan(3*π/20)、tan(π/20)
6: tan(11*π/24)、-tan(9*π/24)、tan(7*π/24)、-tan(5*π/24)、tan(3*π/24)、
-tan(π/24)
7: tan(13*π/28)、-tan(11*π/28)、tan(9*π/28)、-tan(7*π/28)、tan(5*π/28)、
-tan(3*π/28)、tan(π/28)
8: tan(15*π/32)、-tan(13*π/32)、tan(11*π/32)、-tan(9*π/32)、tan(7*π/32)、
-tan(5*π/32)、tan(3*π/32)、-tan(π/32)
9: tan(17*π/36)、-tan(15*π/36)、tan(13*π/36)、-tan(11*π/36)、tan(9*π/36)、
-tan(7*π/36)、tan(5*π/36)、-tan(3*π/36)、tan(π/36)
10: tan(19*π/40)、-tan(17*π/40)、tan(15*π/40)、-tan(13*π/40)、tan(11*π/40)、
-tan(9*π/40)、tan(7*π/40)、-tan(5*π/40)、tan(3*π/40)、-tan(π/40)
となることは面白いし、不思議だ。
DD++さんからのコメントです。(令和3年1月7日付け)
例えば、x^5 - 5*x^4 - 10*x^3 + 10*x^2 + 5*x - 1 = 0 の場合、両辺に (1-i) をかけて変
形すると、
(x^5 + 5i*x^4 - 10*x^3 - 10i*x^2 + 5*x + i) - i(x^5 - 5i*x^4 - 10*x^3 + 10i*x^2 + 5*x - i) = 0
すなわち、 (x+i)^5 - i(x-i)^5 = 0 となりますので、ここから x=tanθ とおき、三角関数の相
互関係とかド・モアブルの定理とかを使ってゴリゴリ処理していけば解けますね。
5 番に限らず一般の次数において、同様の方法でいけるはずです。
GAIさんからのコメントです。(令和3年1月8日付け)
ほう! n:偶数なら、 (x+i)^n-i(x-i)^n = 0 の式を tanθ 版に切り替えると、
cos(nθ)+i・sin(nθ)=−i(cos(nθ)-i・sin(nθ))=−icos(nθ)-sin(nθ)
より、 cos(nθ)=-sin(nθ) なので、 tan(n*θ)=-1 を満たすθを求めることに帰着し、
n:奇数なら、 (x+i)^n-i(x-i)^n = 0 の式を tanθ 版に切り替えると、
cos(nθ)+i・sin(nθ)=i(cos(nθ)-i・sin(nθ))=icos(nθ)+sin(nθ)
より、 cos(nθ)=sin(nθ) なので、 tan(n*θ)=1 を満たすθを求めることに帰着すると
いう構造なのか!つまり、二項定理の姿は、複素数までの世界で眺めることにより、別の
視点から解釈を広めることが可能になるんですね。
(コメント) (x+i)^5 - i(x-i)^5 = 0 より、 (x-i)^5/(x+i)^5 = - i
x = tanθ= sinθ/cosθ とおくと、 {(sinθ-i・cosθ)/(sinθ+i・cosθ)}^5 = - i
すなわち、 {(cosθ+i・sinθ)/(cosθ-i・sinθ)}^5 = i
e^iθ= cosθ+i・sinθ なので、 e^(10iθ)= e^(πi/2)=e^(πi/2+2kπi) より、
10θ=π/2、π/2+2π、π/2+4π、π/2+6π、π/2+8π なので、
θ=π/20、5π/20、9π/20、13π/20、17π/20
ここで、 tan(π-θ)=−tanθ なので、
tan(13π/20)=−tan(7π/20) 、tan(17π/20)=−tan(3π/20)
以上から、 x^5 - 5*x^4 - 10*x^3 + 10*x^2 + 5*x - 1 = 0 の解として、
tan(9π/20)、-tan(7π/20)、tan(5π/20)、-tan(3π/20)、tan(π/20)
を得る。
# 「両辺に (1-i) をかける」というところが、幾何における補助線っぽい感覚で、一気に氷
解する様は感動ですね!