・大学入学共通テスト                    S.H 氏

 最後の大学入試センター試験が55万人超の受験生に対して、令和2年1月18・19日に
行われた。初日は関東地方で小雪がぱらつき肌寒い日であったが、特に大きな混乱もなく
無事終了した。そのときに既に中国の武漢では新型コロナウイルスが発生し、今日のような
混乱になろうとは誰も知る由もない。(もしかしたら一部の人は既に知っていたかもしれない)

 令和3年1月実施予定の大学入学共通テストは、今現在どこまでが決定事項なのだろう
か?国語・数学の記述問題は公平な採点が難しいと見送られ、英語の民間試験の活用も
地域差で不公平が生じると見送られた。ただ、今言えることは、試行テストから推測するに
大幅に出題傾向が変わるだろうということだ。また、新型コロナウイルスの影響で「9月入学」
も声高に叫ばれるも、前広に選択肢の一つであると仰るだけで議論が進んでいる気配が伝
わってこない。「9月入学」が実現しても実際の施行は来年度からと聞く。今の受験生にとっ
ては全く関係なさそうで哀しい。学校では双方向型のオンライン授業などに取り組むところも
あるが、ネットの設備がくまなくすべての家庭に普及しているわけでもなく、その効果は限定
的で、疑問符である。やはり、クラスの中での学びの尊さが実感される。

 今年の高校3年生は大いなる実験台で終わってしまうのだろうか。春夏の高校野球や全国
高校総体、全国吹奏楽コンクールなどが中止され、現3年生は活躍する場もなく卒業になっ
てしまうのだろうか。奇しくも今の高校3年生から活動実績、ポートフォリオなどが入試で問
われるのだったが、その見通しはどうなるのだろうか?文部科学省が早期に対応策を発表
しないのは受験生に対して失礼なのではないだろうか?

 大学入学共通テストがどのような姿であるかは、過去2回のプレテストでおおよその傾向を
掴むしかないが、時間内で読み解く文章の多さや図・グラフなどの資料の多さには辟易する
ほどだ。情報を短時間で読み取り理解し解決していく力が求められるという点は今までの入
試センター試験とは相異なる印象を受ける。よく言えば、学力の3要素を盛り込んだ意欲的
な問題となるだろうが、悪く言えば、欲張りで盛り込み過ぎで長文となり読み疲れるのである。

 試行テストの数学で、次のような問題が出題された。(一部改題)

 建築基準法では、中学・高校と小学校で階段の傾斜がそれぞれ約35°、約32°と定め
られている。階段の傾斜は、(蹴上げ)/(踏み面)で求められる。

 階段の傾斜をちょうど33°とするとき、蹴上げを18cm以下にするためには、踏み面を
どのような範囲に設定すればよいか。

(解) tan33°=(蹴上げ)/(踏み面) より、(踏み面)・tan33°=(蹴上げ)≦18 なの
   で、
      (踏み面)≦18/tan33°(だいたい、18/0.649408=27.71757)

 ここで安心してしまうと誤答になってしまう。問題文に、(踏み面)は26cm以上とあるので、
正解は、
      26≦(踏み面)≦18/tan33°

となる。

 ところで、この問題にどれほどの数学的意味があるのかよく分からない。今までの入試セ
ンター試験の問題もよく練られた良問が多かったが、それらを凌駕するだけの問題にはどう
しても見えてこない。

 いろいろ入試制度をいじらないで、素朴で単純な入試制度が期待される。高大接続改革
と称して、無理に高校教育と大学教育を結びつける必要はないのではないだろうか?高校
までは「与えられる教育」で必要最小限の知識を獲得し、大学ではそれらの知識を活用しな
がら「自らが取り組む学問」の開拓に勤しむという、古来の教育観に立ち返って欲しいと願う
ばかりである。



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