・約数での統計作業                        GAI 氏

 自然数nに対しその約数(1とnを含む)の平均値をM、分散をVで表すとき、1から1000まで
の自然数において、V/Mの値を最も高く持つnは何でしょう?

 また、唯一V/Mの値を同一とする2つの数は何と何か?


(コメント) 今丁度、塾生たちと分散や標準偏差で遊んでいるところなので計算してみた。

 Excel では、約数を書き出すように関数の設定が出来るし、VAR.P関数やSTDEV.P関数
を用いれば、瞬時に、分散や標準偏差を求めることが出来る。

 n=1〜50までについて計算してみた。

V/M V/M
1 0 1 0 26 102.25 10.5 9.74
2 0.25 1.5 0.17 27 105 10 10.5
3 1 2 0.5 28 87.88888889 9.333333333 9.42
4 1.555555556 2.333333333 0.67 29 196 15 13.07
5 4 3 1.33 30 81.5 9 9.06
6 3.5 3 1.17 31 225 16 14.06
7 9 4 2.25 32 117.25 10.5 11.17
8 7.1875 3.75 1.92 33 161 12 13.42
9 11.55555556 4.333333333 2.67 34 180.25 13.5 13.35
10 12.25 4.5 2.72 35 181 12 15.08
11 25 6 4.17 36 110.0987654 10.11111111 10.89
12 13.22222222 4.666666667 2.83 37 324 19 17.05
13 36 7 5.14 38 227.5 15 15.17
14 26.5 6 4.42 39 229 14 16.36
15 29 6 4.83 40 149.6875 11.25 13.31
16 29.76 6.2 4.8 41 400 21 19.05
17 64 9 7.11 42 168.5 12 14.04
18 33.58333333 6.5 5.17 43 441 22 20.05
19 81 10 8.1 44 231 14 16.5
20 42 7 6 45 225.3333333 13 17.33
21 61 8 7.63 46 338.5 18 18.81
22 71.5 9 7.94 47 529 24 22.04
23 121 12 10.08 48 187.24 12.4 15.1
24 50 7.5 6.67 49 456 19 24
25 110.2222222 10.33333333 10.67 50 302.25 15.5 19.5

 上の表を眺めていると、何となく n が素数の時、特徴的な振る舞いをしているように感じる。

 そこで、1000までのうちの最大素数周辺を調べてみたのが次の表である。

V/M
983 241081 492 490
991 245025 496 494
997 248004 499 497


 そこで、GAI さんの問題「V/Mの値を最も高く持つnは何でしょう?」に対して、「n=997」
と予想するのだが、これは如何?


 GAI さんからのコメントです。(令和2年2月1日付け)

 確かに分散値なら素数が大きな値を取るのですが、平均値との比での値では必ずしも素
数が候補にはなりませんでした。「997」は第47位になります。


 らすかるさんからのコメントです。(令和2年2月1日付け)

 表を見ると、素数よりも2素因数が近い半素数の方が大きくなりそうなので、「989」あたり?


 GAI さんからのコメントです。(令和2年2月1日付け)

 正解です。


(コメント) 989=23×43 で、約数は、1、23、43、989

     このとき、分散(V)は、175429、平均(M)は、264なので、V/M=664.5

     確かに、「n=997」の場合より大きい!


 DD++さんからのコメントです。(令和2年2月2日付け)

 V+M^2 はすべての正約数の2乗の平均になります。したがって、

  V/M+M =(すべての正約数の2乗の平均)/(すべての正約数の平均)

 すなわち、 V/M+M = (すべての正約数の2乗の合計)/(すべての正約数の合計)

となります。

 まず、粗い近似をしてみます。

 p を n の最小素因数とし、約数は大きい方から2つだけ(つまり、n と n/p だけ)計算すると、

  V/M+M = n*(1+p^(-2))/(1+p^(-1))

つまり、n は大きい方がよく、最小素因数 p はなるべく大きい方がよく、しかし一方で、左辺
の M は小さい方がよい、すなわち約数の個数は多い方がよいという傾向が見て取れます。

 さて、ではもうちょっと真面目に評価してみます。

 n = Π p[k]^r[k] と因数分解される場合、約数の総和や等比級数の公式から

  V/M = Π (p[k]^(r[k]+1)+1) / (p[k]+1) - M

と求まります。ここで、先の粗い近似で得られた情報から、以下の2つを仮定してみます。

・全ての p[k] は似たり寄ったりの大きさである
・全ての r[k] は 1 である

 このとき、p[k] ≒ n^(1/k) と近似することができ、

  V/M ≒ (n^(2/k)+1)^k / (n^(1/k)+1)^k - (n^(1/k)+1)^k/2^k

となります。この式は、

 k=1 のとき、 (n^2+1) / (n+1) - (n+1)/2

 k=2 のとき、 (n+1)^2 / (n^(1/2)+1)^2 - (n^(1/2)+1)^2/4

となっており、wolfram先生によると、n≒48.7 あたりで大小関係が逆転し、k=2 の方が大きく
なります。

 さらに、

 k=3 のとき、 (n^(2/3)+1)^3 / (n^(1/3)+1)^3 - (n^(1/3)+1)^3/8

を k=2 の式と比較すると、n≒7259 付近で大小関係が逆転し、k=3 の方が大きくなります。

 実際、n≒10000 付近では、

 n = 9991 = 97*103 だと、 V/M ≒ 7247.9

 n = 10013 = 17*19*31 だと、 V/M ≒ 7326.6

のように、nの値そのものの差以上に後者が大きくなっています。

 同様に、

 k=4 が大きくなるのは、 n≒5898648 付近

 k=5 が大きくなるのは、 n≒23859107110 付近

だそうです。指数関数よりも速い勢いで増えそう?



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