・比の計算の妙                         S.H 氏

  比の計算に慣れ親しむと、連立方程式を解かなくてもエレガントに解ける瞬間に立ち会
える。そんな爽やかな経験を是非若いうちに十分しておきたいものだ。

 問題タイプ別に分けたいくつかの問題を通して、比の計算の妙を味わっていただければと
思う。

(比の和が一定)

問題1 AとBの持っているお金の比は、6:1でしたが、AがBに200円あげたところ、持っ
    ているお金の比は、4:3になりました。最初に2人が持っていた金額はいくらですか。

(解) 最初 A:B=6:1  A→Bの後、 A:B=4:3 と考えると、比の和

  は一定なので、比の値の変化量2(=6−4=3−1)が200円に相当する。

  よって、比1当たり100円なので、Aは600円、Bは100円持っていたことになる。 (終)


(追記) 令和2年3月17日付け

 2020年度の洛星中学前期入試で、(比の和が一定)の問題が出題された。

問題1’ 兄と弟の所持金の比は13:11でしたが、兄が弟に867円渡すと、所持金の比は
     3:13になりました。初めの兄の所持金はいくらでしょうか?

(解) 13:11=26:22 兄が弟に867円渡した結果、 3:13=9:39

   比の和が一定なので、 26−9=17 が867円に相当する。

  すなわち、比1あたり 51円 なので、初めの兄の所持金は、

   51×26=1326(円)  (終)


(比の差が一定)

問題2 AとBの持っているお金の比は、4:3でしたが、お年玉で200円ずつもらったので、
     比が5:4になりました。最初に2人が持っていた金額はいくらですか。

(解) 最初 A:B=4:3  A+200、B+200の後、 A:B=5:4 と考えると、比の差

  は一定なので、比の値の変化量1(=5−4=4−3)が200円に相当する。

  よって、Aは800円、Bは600円持っていたことになる。 (終)

問題3 飴の入った箱A、Bがあり、両方に20個加えたら、個数の比が3:1となり、続けて
    さらに40個加えたら個数の比が7:4となった。初めの個数は何個ずつだったか?

(解) 箱A、Bに入っている個数の差は一定で、両方に20個加えたら、A:B=3:1=9:3

  さらに40個加えたら、A:B=7:4=14:8

 比5(=14−9=8−3)当たり40なので、比1当たり8

 よって、20個加えたとき、 Aは72個、Bは24個なので、最初に入っていたのは、

 Aは52個、Bは4個  (終)

問題4 男:女=5:3 のとき、男女とも10人入ると、男:女=10:7 となった。
    現在の男女数は?

(解) 差が一定なので、 男:女=5:3=15:9 男+10、女+10 の後、

   男:女=10:7=20:14

   比5(=20−15=14−9)当たり10なので、比1当たり5

  現在の男=100、女=70 なので、社員数は、170人  (終)

問題5 Aの水槽に200リットル、Bの水槽に100リットルの水が入っている。両方の水槽
     から同じ量の水を汲み出す。Aの残り:Bの残り=3:1のとき、Bには何リットル残っ
     ているか?

(解) Aの水槽とBの水槽の差は、100リットルで、これは変わらない。

   比2(=3−1)当たり、100リットルなので、比1当たり50リットル。

   よって、Bの水槽には、50リットル残っている。  (終)


(一方が固定)

問題6 AとBの持っているお金の比は、4:1でしたが、Bが300円もらったので、比が5:2
    になりました。最初に2人が持っていた金額はいくらですか。

(解) 最初 A:B=4:1=20:5  B+300の後、 A:B=5:2=20:8 と考えると、

  比の値の変化量3(=8−5)が300円に相当する。

  よって、比1当たり100円なので、Aは2000円、Bは500円持っていたことになる。 (終)


(和が一定)

問題7 A、B、Cの3人の所持金の比は、5:4:1でしたが、AがCに300円あげたので、そ
    の比は、7:8:5になりました。最初に、A、B、Cはいくら持っていましたか。

(解) A:B:C=5:4:1=10:8:2 A→Cの後、 A:B:C=7:8:5 と考えると、比の値

   の変化量3(=10−7=5−2)が300円に相当する。

  よって、比1当たり100円なので、Aは1000円、Bは800円、Cは200円持っていたこ

 とになる。 (終)


(片方が増で残りが減であるとき)

問題8 AとBの持っているお金の比は、3:1でしたが、Aが5000円使い、Bが2500円他
    よりもらったので、比が1:2になりました。最初に2人が持っていた金額はいくらです
    か。

(解) 最初 A:B=3:1=6:2  A−5000、B+2500の後、 A:B=1:2 と考えると、

  比の値の変化量5(=6−1)が5000×2+2500=12500円に相当する。

  よって、比1当たり2500円なので、Aは7500円、Bは2500円持っていたことになる。
                                                   (終)

(別解) 最初にA、Bの持っているお金を、それぞれ3N、Nとすると、題意より、

    3N−5000 : N+2500=1:2 より、N=2500

  よって、 Aは7500円、Bは2500円持っていたことになる。  (終)


(両者がともに増または減のとき)

問題9 AとBの持っているお金の比は、5:4でしたが、Aが600円、Bが500円使ったの
    で、残りの比が4:3になりました。最初に2人が持っていた金額はいくらですか。

(解) 最初 A:B=5:4=15:12  A−600、B−500の後、 A:B=4:3=16:12

  と考えると、比の値の変化量1(=16−15)が500×4−600×3=200円に相当する。

  よって、Aは1000円、Bは800円持っていたことになる。  (終)

(別解) 最初にA、Bの持っているお金を、それぞれ5N、4Nとすると、題意より、

    5N−600 : 4N−500=4:3 より、N=200

  よって、 Aは1000円、Bは800円持っていたことになる。  (終)


(コメント) 問題8、9はちょっと自信がなかったので、方程式を立てて計算してみました。
      方程式を立てた方が明解かな?


 問題8、9について、らすかるさんから別解をいただきました。(令和元年8月19日付け)

(問題8の別解)

 Bの所持金と貰った金額を2倍すると、

 所持金比3:2→AがBに5000円あげる→所持金比1:4

となり、問題1と同じ方法で、

 比2(=3−1=4ー2)当たり5000円なので、比1当たり2500円となり、

 A=7500円、B=5000円となる。

よって、答えは、Aが7500円、Bが5000÷2=2500円  (終)

(問題9の別解)

 Aの所持金と使った金額を5倍、Bの所持金と使った金額を6倍すると、

 所持金比25:24→両者3000円使う→所持金比10:9

となり、問題4と同じ方法で、

 比15(=25−10)当たり、3000円なので、比1当たり200円

よって、A=5000円、B=4800円となるので、答えは、

 Aが5000÷5=1000円、Bが4800÷6=800円  (終)


(コメント) なるほど!何倍かして金額を揃えるという手法もあるのですね。らすかるさんに
      感謝いたします。


問題10 今、A、B2人の前にはお金が山のように積んである。1回目は2人は同じ金額を
     取る。2回目は残りのお金をA:B=3:1になるように取ったところ、2人の金額は、
     A:B=4:3になった。Aが1回目に取った金額と2回目に取った金額の比はどうな
     るか?

(解) Aが1回目、2回目に取った金額をそれぞれ N、3n とおくと、A=N+3n 、B=N+n

  このとき、A−B=2n が比1当たりとなる。すなわち、

   A=N+3n=8n 、B=N+n=6n より、 N=5n

  よって、Aが1回目に取った金額と2回目に取った金額の比は、5n:3n=5:3 となる。
                                                   (終)

 問題10は分配算の問題であるが、(比の差が一定)の問題2と同様に解きうる。

(問題10の別解) 最初 A:B=3:1  A+N、B+Nの後、 A:B=4:3=8:6 と考え

  ると、比の差は一定なので、比の値の変化量5(=8−3=6−1)がN円に相当する。

  このとき、比1当たりN/5 となるので、 N → 3N/5 より、

  Aが1回目に取った金額と2回目に取った金額の比は、 5:3 となる。  (終)


 次は、年齢算の問題であるが、(比の差が一定)の問題2と同様に解きうる。

問題11 現在、父親は38歳、子供は5歳である。何年後に、父親の年齢が子供の年齢
      の4倍になるか?

(解) 父親の年齢と子供の年齢の差は33歳で、これは何年経っても変わらない。

 比3(=4−1)当たり33歳なので、比1当たり11歳。よって、父親の年齢が44歳のとき、

 子供の年齢は11歳となり、題意を満たす。

 よって、6年後に父親の年齢が子供の年齢の4倍になる。  (終)


(別解) 線分図を用いると解法も明解になるだろう。

      (終)


 問題11の類題です。

問題12 A、Bの年齢の比は4:1、14年後には5:3となる。現在のA、Bの年齢を求めよ。

(解) 2人の年齢の差は何年経っても変わらない。

    A:B=4:1=8:2 14年後に A:B=5:3=15:9

  比7(=15−8=9−2)当たり14 なので、比1当たり2

  よって、Aの年齢が16歳、Bの年齢は4歳となる  (終)


 倍数算を線分図で解くためには、初めと後で変わらないものを見つける

問題13 A:B=2:3  Aに+10、Bから−30 の結果、A:B=5:6 となった。
    初めの量を求めよ。

(解)

   2   12
   □□+10    □□・・・□+60
     5         30
       
    3       15
  □□■(30)   □□・・・□■■(150) 
   6      30

 上記の関係を線分図を用いれば、最後を「30」に揃えて、

  

 比3(=15−12)当たり、210(=60+150)なので、比1当たり、70となる。

 よって、初めの量は、 A:140 、B:210 となる。  (終)


問題14 2種類のお茶A、Bがある。それぞれの原価はAが100gで620円、Bは100gで
      840円である。100g1000円で売ったとき、280円の利益を上げるためには、
      A、Bの混合比は?

(解) 原価は720円なので、全部Aだと100円得し、全部Bだと120円の損である。

  その比は、100:120=5:6 なので、A、Bを6:5の割合で混ぜて売ればよい。  (終)


(コメント) ちょっと自信がなかったので、方程式を立てて計算してみました。

  Aをxg、Bをyg混ぜるとすると、 x+y=100

  (620/100)x+(840/100)y=720

 31x+42y=3600 にy=100−x を代入して、 31x+42(100−x)=3600

よって、x=600/11、y=500/11 より、A、Bを6:5の割合で混ぜて売ればよい。 (終)


問題15 A君、B君の今の所持金の比は、5:9である。Aは900円、Bは600円をもらった
      ところ、BはAより460円多くなった。A君の所持金はいくらになったか。

(解) 900−(600−460)=760(円)が、目盛り数4に相当するので、目盛り数1に対して、

 760÷4=190(円) が対応する。

 したがって、最初のAの所持金は、 190×5=950 より、今のAの所持金は、

   950+900=1850(円)  (終)



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