積 sin(π/5)sin(2π/5)sin(3π/5)sin(4π/5) の値を求めよ、という問題で、答
えが簡単な分数(5/16)になることに、数学の神秘を感じます。この問題は、平成24年度
の中央大学理工学部で出題されました。
実際に解いてみたいと思います。
与式=sin(π/5)sin(2π/5)sin(2π/5)sin(π/5)
=sin2(π/5)sin2(2π/5)
=(1/4)(1−cos(2π/5))(1−cos(4π/5))
=(1/4)(1−(cos(2π/5)+cos(4π/5))+cos(2π/5)cos(4π/5))
=(1/4)(1−2cos(3π/5)cos(π/5))+cos(3π/5)cos(π/5))
=(1/4)(1−cos(3π/5)cos(π/5))
ここで、 π/5=θ とおくと、 5θ=π より、 3θ=π−2θ
cos3θ=cos(π−2θ)=−cos2θ なので、
−cos(3π/5)cos(π/5)=cos(π/5)cos(2π/5)
よって、 与式=(1/4)(1+cos(π/5)cos(2π/5))
また、 sin3θ=sin(π−2θ)=sin2θ より、 3sinθ−4sin3θ=2sinθcosθ
sinθ≠0 なので、 3−4sin2θ=2cosθ より、 4cos2θ−1=2cosθ
4cos2θ−2cosθ−1=0 において、cosθ>0 なので、 cosθ=(1+√5)/4
このとき、 cos2θ=2cos2θ−1=(3+√5)/4−1=(√5−1)/4
よって、与式=(1/4)(1+(1+√5)(√5−1)/16)=(1/4)(1+1/4)=5/16
(コメント) 試験本番で、このような計算を短時間で本当に出来るでしょうか?
GAI さんからのコメントです。(平成31年4月27日付け)
一般に、x=π/(2*n+1) (n=1、2、3、・・・) とするとき、
Π[k=1,n]sin(k*x)=√(2*n+1)/2^n
Π[k=1,n]cos(k*x)=1/2^n
が成立しそうです。
実際に、n=2 では、 sin(π/5)*sin(2π/5)=√5/4 から、
sin(π/5)*sin(2π/5)*sin(3π/5)*sin(4π/5)=(sin(π/5)*sin(2π/5))^2=5/16
同じく、 cos(π/5)*cos(2π/5)=1/4 から、
cos(π/5)*cos(2π/5)*cos(3π/5)*cos(4π/5)
=cos(π/5)*cos(2π/5)*(-cos(2π/5))*(-cos(π/5))
=(cos(π/5)*cos(2π/5))^2=(1/4)^2=1/16
等々のスッキリ値で表して行ける。
らすかるさんからのコメントです。(平成31年4月28日付け)
sin(π/5)、sin(2π/5)、−sin(3π/5)、−sin(4π/5) が、
16x^4−20x^2+5=0
の4つの解になります。
DD++さんからのコメントです。(平成31年4月28日付け)
α = cos(2π/5) + i sin(2π/5) とおく。5次方程式 x^5 = 1 の解は、
x = 1 、α 、α^2 、α^3 、α^4
なので、恒等式 x^5 - 1 = (x-1) (x-α) (x-α^2) (x-α^3) (x-α^4) が成立する。
この両辺を x-1 で割ると、
x^4 + x^3 + x^2 + x + 1 = (x-α) (x-α^2) (x-α^3) (x-α^4)
これに x=1 を代入して、 5 = (1-α) (1-α^2) (1-α^3) (1-α^4)
両辺の絶対値を取って、 5 = |1-α| |1-α^2| |1-α^3| |1-α^4|
右辺のそれぞれの絶対値の意味を、複素数平面上で図形的に考えると、
5 = 2sin(π/5) * 2sin(2π/5) * 2sin(3π/5) * 2sin(4π/5)
すなわち、 sin(π/5) sin(2π/5) sin(3π/5) sin(4π/5) = 5/16
理工学部を受験する生徒なら、受験勉強をする中で一度くらいこういう計算をやったことが
あるでしょう。本番で複素数の「ふ」の字もない問題から、これを思い出せた人は時間的に有
利になる、ということなんでしょうね。
(コメント) なるほど!複素数を使えば、難解な計算をしなくても済むわけですね。