・初期条件での疑問                        GAI 氏

 アルキメデスが円周率を算出する時、円周上に正6*2^n角形を考え、これに外接と内接す
る周長(a[n]、b[n]で表す。)間での漸化式:

 a[n+1]=2*a[n]*b[n]/(a[n]+b[n]) 、b[n+1]=sqrt(a[n+1]*b[n])  (正に調和平均、相乗平均が出現

が成立することをもとに、算出される。この時、a[0]=2*sqrt(3)、b[0]=3 の初期値が選ばれる
理由はよくわかる(半径が1/2の円に描かれていると解釈)のですが、一方、ガウスが編み
出した算術幾何平均での

 a[0]=1 、b[0]=sqrt(2) 、a{n+1]=(a[n]+b[n])/2 、b[n+1]=sqrt(a[n]*b[n])

において導ける極限値 a[n]、b[n] 共に-->M=1.19814023・・・へ収束、を用いることで、レム
ニスケート曲線の弧長と円周率の密接な関係を示すことが出来るという。

 そこで、何故、 a[0]=1 、b[0]=sqrt(2) の初期値が選ばれているのか?

 初期条件が異なれば、全く違う極限に向かう。

例えば、a[0]=1、b[0]=2でスタートすれば、1.45679103・・・
     a[0]=2*sqrt(3)、b[0]=3でスタートすれば、3.22787895・・・
などの極限値へ向かう。また逆にこれらの数値は何を表すものなのか?

 従って、この初期条件はどこから選ばれているものなのか?その根拠が知りたいのです
が・・・。


 DD++さんからのコメントです。(平成30年12月15日付け)

 そこで、何故、 a[0]=1 、b[0]=sqrt(2) の初期値が選ばれているのか?

 レムニスケート曲線の周長は、Wikipediaの「レムニスケート周率」に書いてあるように、
(1-r^4)^(-1/2) の積分(第一種完全楕円積分になります)で表されます。

 一方で、算術幾何平均も、Wikipediaの「算術幾何平均」に書いてあるように、楕円積分で
表されます。

 つまり、何か都合のいい2つの数の算術幾何平均を考えて変数置換をすることで、両者を
全く同じ積分にできるのではないか?そう考えた結果が「1と√2の算術幾何を取ればいい」
だったわけですね。

 他の数の算術幾何平均も何かの曲線の長さになってるんじゃないかと思いますが、それが
何か重要な意味のある曲線かどうかは……どうでしょう?


 GAI さんからのコメントです。(平成30年12月15日付け)

 初期値は偶然?ガウスの算術幾何平均で求まる初期値の与え方で、同じ極限値に向かう
a0、b0の組み合わせを調べてみました。

 一般に、初期値が a0=a、b0=b であるときの極限値を agm(a,b) で表します。

agm(1,2)=agm(3/2,sqrt(2))
agm(1,3)=agm(2,sqrt(3))
agm(1,4)=agm(5/2,2)
agm(1,5)=agm(3,sqrt(5))
agm(1,6)=agm(7/2,sqrt(6))
agm(1,7)=agm(4,sqrt(7))
agm(1,8)=agm(9/2,sqrt(2)/2)
agn(1,9)=agm(5,3)
agm(1,10)=agm(11/2,sqrt(10))
agm(1,16)=agm(17/2,4)
agm(1,25)=agm(13,5)

 また、面白いことに(計算結果での虚部はほとんど0である。)

agm(1,sqrt(2))=agm(1+i,1-i)
agm(1,sqrt(3))=agm(1+sqrt(2)*i,1-sqrt(2)*i)
agm(1,sqrt(5))=agm(1+2*i,1-2*i)
agm(1,sqrt(6))=agm(1+sqrt(5)*i,1-sqrt(5)*i)
agm(1,sqrt(7))=agm(1+sqrt(6)*i,1-sqrt(6)*i)
agm(1,sqrt(8))=agm(1+sqrt(7)*i,1-sqrt(7)*i)
agm(1,sqrt(10))=agm(1+3*i,1-3*i)

 こうしてみると、ガウスは当時虚数 i に対して懐疑的であった世間に対し、斯くも見事に初
期値に1とsqrt(2)を発見したことか!(偶然数値的計算でひらめいたのかな?)

 大体、算術幾何平均と楕円関数もしくは楕円積分の間に何らかの関係があるとは到底想
像すらできないものなのに・・・、この驚くべき発見を22歳の時点で付けていた数学日記に記
載が残されていることが更に驚愕です。


 DD++さんからのコメントです。(平成30年12月15日付け)

 また、面白いことに(計算結果での虚部はほとんど0である。)

 数列の極限は最初の有限項を切り落としても影響されないわけですから、全部当たり前
の式じゃないかと思うのですが……。

 もう1つ、なんか神懸かり的発想で、1と√2を見つけたように誤解されているようですが、両
者が楕円積分になることさえわかっていれば、「1-x^4 と (1-x^2)*{a^2-(a^2-b^2)*x^2} が同
一の式になるように正の数 a、b を決めてください」という問題を解けばいいだけなので、GAI
さんでも a=1、b=√2 を見つけるのは難しくないと思いますよ。


 GAI さんからのコメントです。(平成30年12月15日付け)

 私でも、a=1、b=√2 を、これからは導けますが、私では、a^2-(a^2-b^2)*x^2 という式が何
処から生まれてくるのかを理解することができません。そこのところをもう少し解説して頂け
ないでしょうか?


 DD++さんからのコメントです。(平成30年12月15日付け)

 どこから出てきたというか、算術幾何平均を求める式の楕円積分(sinθ=xで置換した場合)
の分母の根号内そのものです。


 GAI さんからのコメントです。(平成30年12月15日付け)

 これでやっと、初期値を1、sqrt(2) でスタートさせている理由が納得できました。でも、こん
な事を解説されている書物は見たこともなく、天下り式的に、すでに、この2数があたかも決
まりごとの様に書かれているだけで、初めて読む読者にとっては狐につまされた感が否めな
い。

 分かっている人から見れば説明の必要も感じないでしょうが、分かりたいだけで分かってい
ないものにはこんな部分に躓いているんだということを、どこか頭の片隅にでも入れてもらえ
ればありがたいです。


 DD++ さんからのコメントです。(平成30年12月15日付け)

 まあ、こんな内容に手を出すような人は、ほとんどがちゃんと証明まで読みたい人でしょう
から、「日本語で書かなくても証明ちゃんと見ればわかるでしょ」的な扱いになってることが多
いのは確かでしょうね。

 しかも、このガウスの式の場合、「楕円積分 × 算術幾何平均 = 円周率の半分」という形
をもちいて、円周率と算術幾何平均に関係があることを発見し、a=1、b=√2 なら、楕円積分
のところが、レムニスケートの周長になるから既存の知識が使えそうと気づいたところで、そ
の楕円積分を求める部分にも円周率が入ってくるので、本当はこの時点では、「a=1、b=√2
だと円周率が求まると予測できるよね」とまでは言い切れないんですよね。

 そのあたりがどうしても天下り的に「a=1、b=√2 で試しにやってみたら運良くこうなった」と
書かざるを得ない事情なんだと思います。


 GAI さんからのコメントです。(平成30年12月18日付け)

 ガウスの代数幾何平均が楕円積分と関連していることから、楕円積分(第一種楕円積分
と第二種楕円積分を中心に)で色々な曲線の弧長を計算させて遊んでいる中で、形状も、
計算方法も全く違うにも関わらず、どうも次の2つの曲線での全弧長の値が結果的に全く
同じものになるみたいなので驚いた。

(その1) 楕円:x2/4+y2=1

(その2) 4葉線:極方程式で、r=sin2θ

         直交座標で、(x2+y2)3=4x22

 また、例の1、√2を初期条件とする算術幾何平均の値を、agm(1,sqrt(2))=G で表せば、

  y=sin x 、y=cos x の一周期分の弧長が 2*(G+π/G) で求められそうです。

(Gは弧長を求めるのに役に立つ定数となれそう。)

 これって、計算せずに認識できるものなんですかね?確認のため、それぞれについて計算願えませんか?


(コメント) (その1)を計算してみました。

 媒介変数表示 x=2cosθ、y=sinθ より、 xθ=−2sinθ、yθ=cosθ

 よって、xθ2+yθ2=4sin2θ+cos2θ=1+3sin2θ

  L=∫0π/2√(1+3sin2θ)dθ

 Wolfram先生のお力をお借りして、

  L=4E(−3)=9.688448220547676198428503196391829411953918397886600825083...

 ただし、E(m)は、第2種完全楕円積分。


 GAI さんからのコメントです。(平成30年12月22日付け)

 算術幾何平均での初期値の与え方によっていろいろな極限値が決まるが、その決まった
値の意味や利用の仕方について考え調べてみた。上記でも書いているように、

  a(n+1)=(a(n)+b(n))/2 、b(n+1)=sqrt(a(n)*b(n))

での初期値 a(0)=a、b(0)=b で、 a=sqrt(2) 、b=1 である場合の2つの極限値は、同一の
極限値 agm(a,b)=1.19814023・・・ に収束し、これは、レムニスケート(r^2=a^2*cos(2θ))に
外接する円(x^2+y^2=a^2)に対し、円の円周/(レムニスケートの周長)が大きさに無関係に
一定の位相不変量(円の直径に対するπに相当)になり、その値がagm(sqrt(2),1)ということ
になる。

 そこで、この初期値を変えてみて、 a=2 、b=1 なら何が起きるのか?まず、その極限値
agm(2,1)=1.4567910310469・・・ これって一体何なのか?

 この疑問を解くために、これらの周辺の記事や本、ネットでの論文、サイトでの解説を調べ
ていく中で、次のような流れが出来ていることを感じました。

 まず、このagm(a,b)の極限を出すための道具として積分が現れ、その形から、第1種楕円
積分、第2種楕円積分などとなずけられたタイプの積分により、agmだけでなくその他色々な
曲線の弧長を求めることを可能にする道具として発達していった。

 さらに、ガウスの超幾何級数なるものが登場し、今までそれぞれ発見され発達していた従
来の関数 {(1-x)^(-n);exp(x);log(x);sin(x):arcsin(x);楕円積分;ガンマ関数;etc}を全部飲み込
んでしまうブラックホールのようなものに吸収される事態が起こった。

 この流れで元の意味を解釈すると、

1/agm(2,1)=1/2*{1+[(1/2)/1!]^2*(3/4)+[(1/2)*(3/2)/2!]^2*(3/4)^2
       +[(1/2)*(3/2)*(5/2)/3!]^2*(3/4)^3+[(1/2)*(3/2)*(5/2)*(7/2)/4!]^2*(3/4)^4+・・・・・}
また

1/agm(3,2)=1/3*{1+[(1/2)/1!]^2*(5/9)+[(1/2)*(3/2)/2!]^2*(5/9)^2
       +[(1/2)*(3/2)*(5/2)/3!]^2*(5/9)^3+[(1/2)*(3/2)*(5/2)*(7/2)/4!]^2*(5/9)^4+・・・・・}
一般に

1/agm(a,b)=1/a*{1+[(1/2)/1!]^2*(k)+[(1/2)*(3/2)/2!]^2*(k)^2+[(1/2)*(3/2)*(5/2)/3!]^2*(k)^3+
           [(1/2)*(3/2)*(5/2)*(7/2)/4!]^2*(k)^4+・・・・・}
      ( ただし k=(a^2-b^2)/a^2 とする。)

で、深く関わっていることが明かされていく。一応400項近くで近似すると、小数点以下50位
くらいは一致します。

 逆数でつながるところが曲率に似ていないこともないかな?それがどんな幾何学的意味合
いがあるのかはまだ解釈がわかりません。

 更に、x が十分小さいなら、 log(x)≒ -π/(2*agm(1,4*x)) で、対数関数値と手を結べて、

  log(10^(-5))= -π/(2*agm(1,4*10^(-5)))= -11.512925469・・・

 よって、 -5*log(10)=-11.512925469・・・

  これから  log(10)=2.3025850938・・・ (小数点以下8位までは一致している。)

 初期条件をいろいろ変えてやれば、それなりに結果極限値は利用できそうです。勿論学習
済みな方はとっくにご存知でありましょうが、この問題をきっかけにいろいろな部分に入り込
んでいったら初めて知ったり、驚いたりで初学者の道しるべとして記しました。もしや間違い
や勘違いの部分を見られたら教えて下さい。



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